“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第666回
不倫のすえの官能の味

最初に出てきた蟹が、本日の目玉である「ベニマツバ」。
4人に一皿の配分で、
その皿には綺麗な赤い色の蟹が、まる一匹ずつ乗っている。
甲羅のついている胴のほうは蒸してあり、
足は生の刺身の状態。

まず、刺身の足からいただく。
ハサミを使って足に切れ目を入れて、
その身を取り出して、しゃぶる。
トロッとした甘さが口腔をくすぐる。
通常のブランドズワイはもっとさっぱりとした味だ。
この甘みはベニズワイの濃厚さで、自然で上品。
嫌味な雑味は皆無。
これだけ旨みのある蟹は初めての経験だ。
そして、食感はズワイに近い。
きめ細かい肉質が心地よい。
適度なねっとり感が、
絹のような繊維質の上に乗っているかのよう。
一口目で感動し、
二口目では、官能的な旨さが強まり、無口になる。

もともと、この蟹は「チョウセンマツバ」とか、
「アイノコ」と呼ばれていたもの。
ズワイは水深200m〜600mに生息し、
ベニズワイはより深い500m〜2,000mに生息する。
その僅かな重なった水深で、
不倫が行われた結果の混血児がこのベニマツバで、
600m〜800mという中間的な水深に生息する。
深さが合えばどこにでもいるわけではなく、
ベニマツバは他の2種に比べれば、極端に漁獲量が少ない。
そして、漁業によって異なる餌量や
底質の影響を受けやすいので、
船によって品質が大きく異なるそうだ。

今回のベニマツバは、境港で揚がったもの。
漁場は島根県浜田沖及び隠岐島周辺水域で、
ここで獲れるベニマツバは特に評価が高いそうだ。
この水域で操業するのは、境港の12隻の漁船のうち、2隻のみ。
今回のベニマツバは、
そのうちの1隻の第68魚徳丸のものを送ってもらっている。
この第68魚徳丸を所有する長崎俊行さんは、
日本海西部の水域別のカニの品質を隅々まで知っているという。

一匹の値段を比べると、
ブランドのズワイは15,000円もするが、
ベニズワイは高くて3,000円。
ベニマツバはベニズワイより少し高いだけらしい。
ベニマツバは希少であるが、
ベニズワイも扱いさえよければ
ズワイに匹敵する旨さがあるので、
ベニズワイをもっと食べてほしいとのことだった。
そして、蟹の宴はまだまだ続いた。


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2007年3月26日(月)

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