“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第702回
讃岐三盆と古来伝統醸造の醤油

高松「鮨 中川」で地魚と悦凱陣を愉しんだ翌朝、
高松市内のホテルを後にして、
徳島の山奥の一軒家の割烹を目指す。
運転は悦凱陣の丸尾社長。
直行すると早すぎるというので、
途中で讃岐三盆の精糖所と
伝統的な醸造方法をいまでも守っているという
醤油醸造蔵に寄ることになった。

香川県から徳島県へ入る直前に高速道路を降りて、
「引田」へ向かう。
古い家屋が並ぶ町並みは懐かしさを覚える。
まずは、昔ながらの手作りの讃岐三盆の精糖所
「三谷精糖所」へ立ち寄る。
徳島では岡田精糖所を何回か訪問したが、こちらは初めて。
最近では和三盆作りも機械化されているところが多く、
昔ながらの労力の多い、
手作りの精糖方法を伝承する精糖所は希少だ。

三谷精糖所の入り口には、
サトウキビをしごいて糖の汁を絞るための機器が置いてある。
木造で、歯車がついていて、伝統を感じさせる。
風格のある古い建屋に小粋な入り口を通って入ると、
茶店のように大きなテーブルの周りに椅子が並べてあり、
そこで讃岐三盆の試食ができる。
お茶が提供されて、
讃岐三盆で固められた小さな和菓子を味見する。
上品な甘みに心が和む。

三谷精糖所を後にして、
こんどは、古来の方法で醤油を醸している
「かめびし」を訪問する。
こちらは、「むしろ麹」という
手間隙のかかる麹作りをいまなお頑なに守っている。
むしろの上に丁寧に麹を広げて14段に積んでいき、全部で168枚。
徹夜でストーブを炊きあたためて、夜明けには窓を開けて冷す。
次の朝には全部の段を取り外して麹を手でもみほぐし、
もう一度積み上げなおす。
そのような温度管理をこまめに三日三晩続けて、
四日目の朝に黄色い麹のはなが咲く。

そうして出来た醤油を試飲した。
小皿に垂らされた何種類かの醤油を手の甲で受けて味見をする。
いずれも、独特のコクがある。
特に十年熟成醸造醤油が複雑さと酸味のバランスがすごい。
讃岐三盆と醤油を自宅への土産に携えて、
いよいよ、今回の旅の最終目的地である徳島の山奥へと向かった。


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2007年5月29日(火)

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