伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第2回
ゆっくりモード

住んでみて一番困ったのは、欧州の休暇の多さとその過ごし方です。
これには本当に途方に暮れました。
長い休暇に憧れる経験はあったとしても、
急には上手く過ごせないのです。
旅ばかりをするわけにはいかず、
周りを真似して植木の手入れをしたり、散歩したりしてみても
すぐに3日間で十分な気分になります。

ここでは、老いも若きも、その懐具合にも関わらず
休暇を取らなければなりません。
日ごろから休暇慣れした皆は、
長い休暇が終るとすぐに次の休暇が待ち遠しそうな話をしています。

雇用された場合には、取得すべき休暇は年間約30日間。
土日を組み合わせると6週間というのが一般的です。
雇用した場合には、従業員にこの休暇を与えなければなりません。
当然のことながら、
医者が診断する事故や病気都合の場合にはこれに含まず。

しかも、例えば、風邪をひいて病院に行こうとするなら、
軽く咳が出始めた時には、診察を受け、
必要に応じてすぐ診断書をもらいます。
何かひっかかるものを感じながらも、
強い薬を飲まなくて良い、他人に伝染させない、治療も簡単
というメリットを認めざるを得ません。

じっと我慢して、ひどい咳と熱にうなされながら病院に行くと、
何故もっと早く治療に来ないのか、
ときっと驚かれてしまうでしょう。
時間が無かった、という理由は無いはずなのですから。

適当な単語を選んで文を完成させよ、
という、日本で作られたドイツ語問題がありました。
“ヨハンは熱が出ていたけれども、
大事な仕事があったので出社しました。”

文法問題としては正しいけれど、あまり現実的ではありません。
実際に頻繁に起り得るのは、どちらかといえばこちらです。
“ヨハンは大事な仕事があったけれども、
熱が出ていたので欠社しました。”

この欧州流“ゆっくりモード”は、
「働かないのかな」と呆れるように見えれば、
「人生を楽しんでいるな」と時に羨ましくも見え、
なかなかに悩ましいものです。


←前回記事へ

2006年11月8日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ