死ぬまで現役

老人を”初体験”する為の心構え




第36回
シロウト商法の時代

こういうお互いにあまり関連のない事業よりは、
イトーヨーカ堂がセブンイレブンやデニーズを手がけたり、
あるいは青木建設がウェスティン・ホテルの
チェーンを買収したりするほうがずっと理にかなっている。
またソニーがCBSの音楽部門を買収するほうが
ずっと地についた動きである。
どちらが川上で、どちらが川下か、という判定はしがたいが、
食品の流通業者がレストランや
小型店の多店舗展開をするのはすぐ隣り合わせのことだし、
建築会社がホテルの建築を請け負っているうちに
施主に倒産されて、
やむを得ずホテルの経営に乗り出したところ、
意外にホテル経営のノウハウを身につけるようになり、
それが国際化の波に乗って
世界的スケールでホテル・チェーンの展開をするようになると、
一見、奇異に見えるけれども、
考えてみればそう不思議なことではない。

叩き上げの建設会社の社長にそれができる保証はないけれども、
青木建設の社長のように、
外交畑の役人をして世界中を歩きまわった人が
親の跡を継いで建設会社の経営をすれば、
そういう発想を実現に移しても何の違和感もない。

またソニーのような音響機器のハードをつくっていたメーカーが
レコード部門に興味を持つのは当然であり、
CBSと合弁で日本に会社を設立したのが大成功をおさめて、
やがてアメリカのご本体まで呑み込むようになったとしても、
ごく自然の成り行きとみてよいだろう。
こうした隣り合わせ、もしくは、
川上、川下の分野に進出する場合は成功のチャンスが大きいし、
隣り合わせとはいいながら、
自分たちにはまったく新しい仕事の分野だから、
知らないものに対する挑戦という意味で、
新機軸のでる可能性は大きいのである。

第三はまったく何のかかわりもない分野への挑戦である。
産業界の盛衰が激しく、企業の斜陽化が
経営者にも自覚されるようになると、
廃業、転業が盛んになる。
まだ本業が稼いでいるうちに、
次の成長産業に進出して新しい橋頭塗を
確保しておこうとする動きは、
日本国中、至るところに見られる新しい現象である。
とりわけメーカー業者のサービス業界への進出が多く、
機械屋が温泉宿の経営に乗り出したり、
酒屋が出版屋をやったりするのも珍しいことではなくなってきた。
こうしたシロウト商法がはたしてうまく行くものだろうか、
と首をかしげる向きは多いが、
世の中は「経験が人間を駄目にする」だけでなく、
新しい経営の邪魔になることが多いので、
むしろシロウトであることが
成功する条件のーつにさえ数えられる。
いわば「シロウトの時代」と断言しても間違いのない時代であり、
しかもそれが一地方だけに起こる現象だけでなく、
世界的スケールで起こるから、異業種間の相互乗り入れ、
シロウトの参入による大乱戦はますまふえるといってよいだろう。

人が動けば、お金が動く。
お金が動けば新しい事業がはじまる。
こういう動きに自分が参加するかどうかは、
自分自身が決定することである。
世の動きに興味を失えば、自分自身の動きが鈍くなり、
やがて人生の秋が来たことを思い知る。
それがいやならば、自分自身が動くよりほかない。
動きの速い時代だから動く舞台に
事を欠くようなことはまずないし、
動くことによって、年を忘れることは
そんなに難しいことではないのである。





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2015年2月11日(水)

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