死ぬまで現役

老人を”初体験”する為の心構え




第75回
お金と時間のバランスのむずかしさ

ところが、台湾では土地の使用に対する規制が
無茶苦茶きびしく、この土地は国防部の赤線にひっかかり、
工業団地はもとよりのこと、
ゴルフ場や墓地をつくることもできないという。

やむを得ず、そのまま放置しておいたが、
最近俄か成金になった台湾でゴルフがブームになってきた。
放置していた間に桃園に新しい国際飛行場ができたし、
その飛行場まで車で十分の距離にある場所に、
私が台北に行く度に人がきて、
「私がお金を出しますから、ゴルフ場にしませんか」
と知らない人からまでしきりとお声がかかる。

お金は出してもらわないでもよいけれど、
そんなに言うならと、二年ほど前からゴルフ場の申請をした。
台湾のゴルフ場の許可審査はかなりきびしく難関がいくつもあって、
ハンコが全部で三百八十個も要るときかされた。
たしかに次々と難関にぶつかって途中で駄目かと思ったが、
ことしになってやっと正式に許可がおりた。
目下、その道の第一人者である加藤俊輔氏に設計をしていただいているが、
「いまから着手してどのくらい時間がかかりますか?」ときいたら、
「工事に着手するまでに半年、ブルドーザーが入って
コースの形ができるまでに一年、芝生がきれいにできるまでに一年、
まあ、二年半から三年でしょうね」と言われた。

若い時の三年は何ともないが、あと十二年しかない歳月のうちの三年となると、
残り時間の四分のーが吹っとんでしまう。
もちろん、全部の時間が注ぎ込まれるわけではないが、
他のプロジェクトが重複してひしめきあっており、
あれとこれと、これとあれと、指折りかぞえると、
自分の生きている間にやる積りでいたことが
必ずしも全部できるとは限らなくなってきた。

若い時は時間なんていくらでもあったのに、
どうして何もやらなかったのだろうか。
いまはもう残りの時間も知れているのに、
どうしてこうも次から次へと仕事が追っかけてくるのだろうか。
「ヒマがあれば金がない。金があればヒマがない。
それでもヒマも金もないよりはまし」と
私は「金とヒマの研究」という自著の扉によくサインをするが、
時間とお金と両方ほどほどにバランスがとれるということはなかなかないものである。

それでも、残りが少ないとなると、
時間だってお金と同じように、
もっと多くのものを生み出すためにだけ使うわけにはいかない。
人はゴルフ場に楽しみに行くが、私はゴルフをやらないから、
ゴルフ場をつくることが仕事になってしまう。
「こんなことでは駄目ですよ」と私の部下の者は
私にゴルフを覚えろと強制する。
何しろハンディ・ゼロというのもいるのだから、
ただではすみそうもない。

「老いては子に従え」というが、
部下の言いなりになってゴルフのクラブを手にしたとしても、
この齢になってはたしてどのていどの進歩が望めるものか。
「始球式はオーナーが球を打つものですよ」とおどかされているが、
「始球式の日に空振りをしたらどうしよう」
と考えるだけで夜もねられなくなってしまう。





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2015年5月13日(水)

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