死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第27回
百万円のタネ金ができれば、上手な運用法も考えるようになる

いまは、あのころに比べれば、
百万円、二百万円貯めるのは割合いラクなんです。
当時は、電気器具やらなにやら、ほしいものがたくさんあった。
それをあと回しにしなければ貯金ができないわけですから、
克己心を要求される程度が、
今日よりも大きかったと思います。

いまは、モノをほしがる度合いが減ったとは思えないけれども、
その気になれば、買わなくてもすむものがほとんどでしょう。
シーズンの洋服がひととおり揃っていれば、
流行の洋服を買わなくてもすむんです。
豊かになった分だけ、
お金の貯まるチャンスが多くなったと言えるんじゃないですか。

ですから四半世紀前と同じ感覚で論ずるわけにはいきませんが、
お金の持っている力とか、
お金の動きは原則的に、そんなに変わっていないと思います。
お金を貯める目標を立てたら、
やはり目標へ到達するまでは、 頑張らないといけないんです。

私は、とりあえず百万円貯めてみなさいとすすめています。
こう言うと、一万円札を一枚ずつ
百枚貯めればいいんだなと誰でも思うでしょう。
ところが、実際には、1万円掛ける百と、
貯めた百万円とでは実感が違います。
百万円貯まると、なんとなくーつの塊になって、
くずせなくなるんですね。

一枚一枚のレンガを積んでできた塀と思えば、
わかりやすいかもしれません。
コンクリートでつないで塀になると、
もう元の一枚のレンガには戻れない。
それと同じで、百万円貯まると、
コンクリートで固まってしまって
ちょっとくずす気になれない、
みたいな心理状態になるんです。

百万円貯まると、
今度は二百万円になるのが容易になってきます。
二百万円になると、
それがまたひとつのブロックになっていくから、
三百万円、四百万円、五百万円につながっていく。
つまり百万円になるまでの道のりのほうが、
百万円から五百万円になる道のりより遠いんですね。

もうひとつの違いは、
一万円なら消費財を買ってしまうけれども、
百万円になると、別のことを考える。
欲望をあと回しにして、
百万円をタネにお金を育てる方法を考えるようになるんです。





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2013年4月28日(日)

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