死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第35回
金儲けは、人生における究極の目的ではない

私の知っている人を見ても、
セックス産業というか、射精産業というか、
そういう商売をやっている人の顔立ちは、
ちょっと違います。

裏街道を歩いているという意識が、
いつのまにか顔に表われるんでしょう。
服装からして、おかしくなりますもの。

若い人の中には、卑しい家に育ったわけでもないのに、
金になればどんな商売だってかまわないじゃないか、
セックス産業だって平気だと考える人がふえています。
私のところへも、親子揃って相談に来たりするんです。

「古くからの旅館を営んでいるけれど、
これじゃあ儲からないから、
改造してラブホテルにしようと息子が言い出したんですが、
どんなものでしょうか」と親父さんのほうが
おそるおそる私に聞きます。
私が「お父さんはそれでいいんですか」と聞くと、
「私は賛成しないが、息子が言うもんですから」
と半ば諦めているんですね。

これは、やっぱり時代の影響なんでしょうが、
金さえ儲かればいいという考え方を持っている若者が多すぎます。
職業に貴賎はないというけれども、
人間の品性には貴賎があると思うんです。

男のむき出しの欲望を挑発して商売するのは、
どう考えても、上品とは言えません。
その中にドップリつかっていると、
もう抜けきれなくなって顔にまで出てくるんです。

若い人が、そういう商売を平気でやりたがるというのは、
いろんな体験をしてないからでもあります。
名刺を出したときに、相手がどういう反応を示すか。
自分自身でも、どんな後ろめたさがつきまとうか。
それが、まだわからないんです。

実際に体験すれば、反省することもあると思うんですが、
人生、金儲けだけが唯一の目的とは言えないことがわかってくる。
最近は、そうはならない人が多すぎるような気がします。

誰でもお金はほしい、お金がなければ生活はできない。
しかし、だからといってお金がすべてという生き方は、
お金があるようになればなるほど、
だんだんむなしくなるんじゃないかと思います。





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2013年5月6日(月)

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