死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第45回
買いたいものの八割は、まず不必要なものと心得る

ある女性評論家と対談したとき、
女性がいちばんよく買うもので
いらないものは何かという話になったことがあります。
彼女は、それはサングラスだというんです。
ご自分の経験でしょうが、
デパートへ行ってサングラスが目につくと、
すぐ買ってしまう。

よくぞこれだけ買ったと自分でもあきれるほど、
家に溜まっているそうです。
私の場合は、カバンを買いたがります。
アルゼンチンでも買えば、
スペインでも買う。
もう置き場所がないくらい溜まってしまって、
ときどき人にあげたりするんですけれど、
中には、買うだけで一回も使っていないものもあるんです。

サングラスもカバンも、いわゆる衝動買いです。
これがバカにならない。
いや、もともとムダ使いというのは、
ほとんどが衝動買いなんです。
だから、売るほうからいえば、
なるべく衝動買いをさせるような方法を考える。
パッケージのデザインを目につく色につくるのも、
そのためなんです。

いかに目立たせるか、
視覚的な面や心理的な面からの研究もされています。
いちばん目立つのは、色でいえばやっばり赤なんだそうです。
そうすると、必然的に赤のデザインがふえてきて
目立ちにくくなりますから、
今度は急に白っぽいパッケージがふえたりするんです。

お金を貯めようと考えるなら、
当然、いかに衝動買いをおさえるかが重要になってきます。
だいたい、ほしい、買いたいと思った品物で、
それがなくては生活できないものなどあまりないんです。

もっとも、衝動買いというのは、
読んで字のごとく、衝動で買ってしまうわけですから、
その場でおさえるのはたいへんかもしれません。
ですから、ともかく第一歩として、
ものを買いたいという欲望をおさえることがたいせつでしょう。

いちばん簡単な方法は、一度目は買わずに、
もう一度、考えてから買いに行く。
そうすると、たいてい二度は行きません。
行ったとしても、まず買いません。
二度目に行っても、まだ買いたいようだったら、
これは、ほんとうにほしいものですから、買うよりほかない。

また、見た瞬間気に入った、これを買おうというのは、
ある意味では、買い物本来の姿であります。
そのとき買わないと、いいものを買いそこねるおそれがあります。

外国旅行をしたときには、とくにそうです。
今度いつ来るかわからないのですから、
気に入ったものがあったらすぐ買うのが、
ひとつのコツでもあるんです。
そうじゃないと、あとでしまったと思ってももう間に合いません。





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2013年5月16日(木)

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