死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第55回
つまらないと思いながら仕事をつづけていたのでは、
お金は貯まらない

私は、よく人から
「そんなに忙しいのによく病気をしませんね」
と言われることがあります。
忙しくて病気をするヒマもないんです
と答えることにしていますが、
実際、好きな仕事に打ち込んでいれば、
大病することなどないのではないですか。
"病は気から"というように、
人間、気が張っているときは、
病気のほうで逃げていくものです。

もし私が病気で倒れるとすれば、
それは事業に大失敗して
ニッチもサッチもいかなくなったときだと思うんです。
仕事に没頭する、仕事がおもしろいというのが、
最高の健康法です。

仕事がおもしろいから一生懸命働く。
働くからお金もはいってくるー
こうした図式が理想なんです。
ですから、お金を貯めようと思うなら、
まず、自分が一生をかけられる仕事、
天職を見つけなければならない。
つまらないと思いながら仕事をつづけていたのでは、
お金は貯まらないものです。

もっとも、やりがいのない仕事だがお金には困らない
という場合もあります。
ただ、お金というのはもともと生活するための手段なのですから、
毎日の生活が楽しくないなら、
何もお金を貯める意味はありません。

逆に、さし当たってお金にはならないけれども、
自分にとって天職と思える仕事があったら、
お金より仕事を優先させることがたいせつです。
そういう仕事をやっていれば、
いずれはお金のほうから寄ってくるものなんです。
いまの世の中、食べるくらいは何とかなるんじゃないですか。

しかし、一人の人間が「自分のやりたいことはこれだ」と、
「天職」を見つけ出すことは容易ではありません。
ましてや大学を出て、社会人になったばかりのころに、
「これが自分の仕事だ」と自信を持って
仕事に取り組める人は、まずいないと思います。

いろいろ仕事をやっているうちに
「これは自分に合うけれど、あれは自分に合わない」
ということがつかめてくるのです。
たとえば、外を走り回って人と会う営業や
販売の仕事が向いているとか、
逆に人に会わずに机に向かって書類を見たりする
事務的な仕事がいいとか、しだいに考え始めるわけです。

そのへんのことが徐々に見えてきて、
ついに自分のやりたいことはこれだとハッキリしたとします。
そんなとき「いや、いまやめたらソンをするのではないか」
「もっといい仕事があるのではないか」などと
グズグズしているのはもったいない。
そういう人にかぎってあとになって、
いろいろと仕事の不平不満を言ったりするんです。

自分で一生懸命やったのにうまくいかないというのであれば、
話は別です。
しかし、現在の仕事に不平不満を持っているなら、
その打開策をたちどころに実行に移し、
方向転換をする必要があると思います。





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2013年5月26日(日)

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