死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第68回
銀行を選ぶなら、知名度より、借りやすいかどうかで選べ

「どこの銀行にどういう理由でお金を預けているか」
という調査をした結果を見ると、
いちばん多いのは「近くにあるから」だそうです。

そのつぎは、「日本中に知られている有名な銀行だから」
「とても立派な建物で、ここならつぶれることはなさそうだから」
「友だちがいるから」「営業社員に勧誘されたから」
といった理由がつづきます。

しかし、はたして、「近くの銀行」や「有名な銀行」が、
あなたにとってほんとうに役に立つ良い銀行でしょうか。

預金の動機のひとつは、
お金を家に置いていて泥棒に盗まれたりしないためです。
もうひとつは、預金には利息がつくので
家に置いておくより有利だからです。

しかし、私は、インフレが進行するような経済状況下では、
ただ預金をするよりも、
もっと違った資金運用があるはずだと主張してきました。

たとえば、自己資金が足りなければ、
お金を借りてマイホームを建てたり、
マンションを買ったりする。

そういう場合、あなたにお金を貸してくれる銀行こそが、
あなたにとってほんとうに役に立つ銀行です。
それはどこかというと、かならずしも有名な銀行ではありません。
信用金庫だって、心強い味方になってくれることが多い。

金融機関には世間的な常識に従って、
都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、
信用組合といったランクがあります。

しかし、これは役に立つかどうかのランクではありません。
たとえば信用金庫は、その地域の金融機関ですから
テリトリーが小さい。
支店だって何十店のものもありますが、
三つか四つしかないというのも珍しくありません。

支店長の交替もあまりなく、
商店街の誰がどんな商売をやっていて、
どのような金ぐりになっているかも熟知しています。

だから、町の小さな商店主が、百万円、
二百万円といったお金を貸してほしいと申し出ても、
気軽に応じてくれます。

地方の小さな町に行くと、
「信用金庫はあなたの銀行」などという
キャッチフレーズを見かけることがあります。

第二地方銀行は、むかしの無尽会社からスタートした
もとの相互銀行ですから、
顧客層がはっきりしないという傾向があり、
地域を固めている信用金庫に比べると、
「ふるさと」がはっきりしていません。

しかし、それなりに信念のある経営をしているところもあるし、
経営基礎のそれほどしっかりしていない企業に対しても、
かなり積極的にお金を貸してくれます。

そうなると、堅いいっぽうの都市銀行よりも、
中小企業者にとっては「役に立つ」銀行である場合があります。





←前回記事へ

2013年6月10日(月)

次回記事へ→
中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」

ホーム
最新記事へ