死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第71回
すこしずつでも毎月返済することが、お金の信用につながる

お金が貯まる人はそんなやり方はしません。
お金が貯まる人の借金の目的は、
たいてい自分の家を建てるためとか、
土地を買うためとか、マンションを買うためといったことです。

あるいは、事業を始めるから
という理由で銀行や信用金庫へ行って、お金を借ります。

金融機関からお金を借りるのは、
むかしは企業が中心でしたが、
最近では、個人も、金融機関から
借金するようになってきています。
個人といっても、自営業者の借金がほとんどです。

その場合の返済方法は、
事業資金にしても不動産を買った資金にしても、
一度に返済するのは無理ですから、
借りた翌月から三年間、三十六回に分割して払うとか、
五年間、六十回の分割にするといったことになります。

あるいは、借りたばかりのときは返済ができないから、
借用後半年か一年間は元金を猶予して、
半年後、一年後から返済し始めるといった方法をとります。

どういう取り決めであっても、
いったん取り決めたことは、
どんなことがあっても守ることがたいせつです。

人との約束を守ることは、
借りる人の信用にかかわることだからです。

お金の貸し借りには、
何をさしおいても信用がいちばんたいせつです。
信用があればこそ、お金が借りられ、
その返済をきっちりと履行することが、
信用をより確かなものにしていくのです。

銀行と借金の交渉をするときは、
銀行の支店長や貸付係との交渉になります。

支店長というのは、だいたい二、三年で交替しますから、
一人の人間と個人的に親しくなってもあとがつづきません。
やはり、たいせつなのは過去の実績なんです。

返済期日の約束をしておきながらそれを守らなければ、
はっきり記録に残ってしまいます。

たとえ、たった一日の遅れであっても
一日遅れて帳簿に載る。
そういうことがたび重なると、
つぎの支店長にバトンタッチされたときに、
おや、この人間はちょっとだらしのない人だな
と思れてしまいます。

その点、返済期日をきちんと守っている人は、
記録がはっきりそれを示していますから、
このつぎに借金する場合も
話をスムーズにすすめることができるわけです。





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2013年6月13日(木)

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