死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第72回
借金するかどうかで、お金の貯まるスピードはまったく違う

毎月倹約して、一万円でも二万円でも銀行に預金する。
この基本的な貯蓄精神がなければ、
お金は貯まりません。
貯金は財産づくりの第一歩なんです。

でもそれは、学校にたとえていうなら
まだまだ小学校程度でしょう。
いくらお金を貯めても、
その貯金で金利をもらっているだけでは、
いつまでたっても財産はふえません。
ある程度のお金ができるようになったら、
もっと積極的に、
自分からお金をふやしていくことを考える必要があります。

この、”ふやす”という仕事の過程で、
他人のお金を利用するというテクニックが必要になってきます。
わかりやすく言うと、
事業のためには借金をしなければならなくなるのです。

アメリカの鉄鋼王カーネギーは、
ピッツバーグにいたころ、
州いちばんの借金王でした。
ある時期は、ありとあらゆる銀行に使いを出して
「いくら借りられるか」と、
たずねて回っていたというエピソードが残っています。

自分一人の資金力には、所詮、限界があります。
だから、ある程度お金が貯まって信用ができてきたら、
今度は、お金を借りることを考えなければなりません。
借金のできる人とできない人とでは、
お金のふえるスピードがまったく違うんです。

四十年前、坪一万円のときに五十坪買おうとすると、
五十万円のお金が必要でした。
十万円しか持っていない人が、
五十万円貯まるまで待っていたら、
五十万円できたころには、
土地の値段は五倍にも十倍にもはねあがっていたでしょう。

そこで思いきって十万円を頭金にして、
四十万円借り入れて、土地を手に入れておく。
すると、借金は一定の金額ですから、
しばらくして賃金が上がると、
借金の返済が容易になり、
いっぽう、手に入れておいた土地は
ひとかどの財産になっている。
そういう体験をした人は一人や二人ではないでしょう。
今後もそういうことがくり返されるかどうかはわかりません。

おそらく、そういうことがあるとしても、
スピードがかなり落ちるでしょう。
ただ、どんな事業をやるにしても、
自己資本だけでやるのと、借金をするのとでは、
仕事の大きくなるスピードが違います。

もちろん、借金すると
それだけリスクが大きくなるのは事実です。
事業がうまくいかずに失敗したときは、
借金が致命傷になることもあるでしょう。

しかし、事業をうまく軌道に乗せられる自信のある人は、
借金をうまく利用して財産形成を
スピードアップさせるのが賢い方法です。





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2013年6月14日(金)

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