死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第73回
銀行の信用をつけることが最優先

もっとも、借金をするのも、
借金を利用してお金を儲けるのも、
簡単にできることではありません。

当然のことですが、お金を借りることは、
お金を預けるのとは事情も異なるし、
むずかしさも違います。

お金を貯めるのが小学生の仕事だとしたら、
借金というのは高校生か大学生の仕事でしょう。

お金を借りるためには、
それなりの高等技術が必要になります。

お金はひじょうに臆病なもので、
ちょっとでも怖がらせると、たちまち逃げ出してしまいます。

いつもお金のほうが安心して、
懐にはいってこられるような
状態をつくっておかなければなりません。

お金は、仲間のいないところにはやって来ないものなのです。
反対に、お金の儲かりそうなところへは
お金がドンドン集まってきます。

だから、お金の儲かりそうな仕事を考えればよいし、
そういう環境づくりをすることがたいせつです。
お金を貯めるだけなら、
金利がすこしでも高いところにお金を預けるほうがトクです。

しかし、もし銀行のお金を利用する気があったら、
わずかに金利の高いところにお金を預けるよりも、
少々、金利が低くても、
将来お金の借りられる銀行にお金を預けたほうが
自分のためになります。
だから、私は郵便貯金もしたことがありませんし、
国債を買ったこともありません。
銀行の信用をつけることを優先的に考えています。

トイレ掃除で金運をつかんだ福富太郎

”キャバレー王”の異名をとる福富太郎さんが、
どうして二十代でキャバレーの店長を任せられたか
について聞いたことがあります。

もともとはボーイの一人にすぎなかったのが、
あっという間に店長になったのは、
福富さんに言わせると、
「トイレ掃除のような、
人のイヤがる仕事をすすんでやるように心がけていた」
からだそうです。

キャバレーはお客様商売です。
トイレなどを汚したままにしておくことは、
いちばんのタブーです。

しかし、トイレ掃除は誰もすすんでやろうとはしない。
ときには大便が詰まってしまうようなこともあります。
すると、ますます掃除をしたくない。

ところが福富さんは農家の出身だったので、
肥桶をかついだこともあるし、
糞尿に対して汚いという感覚があまりありません。

あるとき、浄化槽があふれてみんなが困っていたところ、
福富さんはさっと中にはいって、
それこそ体中をクソだらけにしながら、きれいにしたといいます。
その姿をオーナーが見ていて、
「こいつはなかなかやるわい」と思って、
若い福富さんにお店を任せたのです。





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2013年6月15日(土)

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