死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第81回
些細な約束は、とくに重視して守ること

よく、約束にルーズな人はお金にもルーズだと言われます。
たとえば、時間を守らないとか、
ガスや水道代など公共料金の払いを忘れるとか、
またほんの些細なことだからといって、
約束ごとを無視する人がいます。

一般に、芸術的な仕事にたずさわっている人たちは、
世間の常識的なルールを、
ある程度は無視していいと思っている人が多いようです。

私の親しくしていた作家の檀一雄さんや、
やはりもう故人になってしまった五味康祐さんなどは、
原稿の締切りを守らないことで有名でした。
檀さんなどカン詰めにされて原稿を書いているときに、
隣りの部屋に新聞記者を待たせたまま、
窓をあけて屋根の上の物干し台づたいに
スリッパのまま逃げたりしたこともあります。

そうしたことは、作家だから許されるという一面がありますが、
やはり基本的には、作家といえども
約束は守らなければならないと私は思います。

私は雑誌連載を何本もかかえていますが、
締切り日に遅れたことは一度もありません。
人と約束をした以上、それは手形を切ったのと同じです。
期日になってから、
お金ができませんでしたというわけにはいかないでしょう。
かならず約束を守るとなれば、人が信用してくれます。
小さな約束でも大きな約束でも同じことです。

とくに銀行と取引をするようになると、
約束を守らなければ、
もう二度とお金を貸してもらえなくなります。
いつ返すと約束したことは、
自分が忘れていても相手はしっかりおぼえていますから、
「あいつは言ったとおりにやらない」と思われると、
もう信用されなくなります。
もちろん、ビジネスマンにとって
たいせつな時間の約束についても同じことが言えます。





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2013年6月23日(日)

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