死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第80回
公私のけじめをつけられる人は、金銭的な信頼も得られる

公私のけじめをきちんとつけることも、
必要なことのひとつです。
よく見かけるのは、酒席の支払いについての公私混同。
たとえば、人事異動などで配置換えになったときや、
新入社員がはいってきたときなど、
上司が部下を引き連れて「今日は俺のオゴリだから」
と飲みに出かけることがよくあります。
ところが、翌日になると、経費として経理に請求する人がいる。

いかにも身銭を切ったようなそぶりで恩に着せようとするから、
連れて行った社員たちは「なーんだ」とバカにします。
下の人たちも、そのあたりはしっかりと見ているものなのです。

私の台湾の会社でたまに社員募集をするのですが、
そのとき、応募の手紙を、
現に勤めている会社の便箋で書いてくる人が
意外に多いのにびっくりします。
他の人生を歩もうとする人が、
やめたいと思っている会社の便箋を
どうしてあんなに平気な顔をして使うのでしょうね。

もちろん、そんな人は書類だけで不採用にします。
公私のけじめのなさは、
金銭面についてもあてはまるのです。
そんな人に仕事を任せることなどできません。

逆に、公私をハッキリ区別している人は安心です。
「この人にはお金を預けておいても大丈夫だ」
という気持ちになるから、当然仕事だって任せます。
私に限らず経営者というのは、
だいたい同じ考えを持っていると思います。
だから、公私を混同しがちな人はなかなか出世もしない。
逆にキチッとけじめをつけられる人は、
昇進が早いと言ってもいいのではないでしょうか。

このことは、私自身、いつも自分に言い聞かせています。
私はいくつかの事業を同時に並行してやっていますが、
その中には他人と共同でやっている仕事もあります。
車の費用や交際費は、その会社のお金を使わずに、
百パーセント自分所有の会社に負担させます。

共同事業は共同事業、
自分の財布は自分の財布と割り切っているからです。

サラリーマンの中には、
「これくらい」という気持ちで
会社の備品を個人的な目的のために
使っている人がいるようですが、
そんなことでは出世も望めないし、
お金を貯めることも無理でしょう。





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2013年6月22日(土)

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