死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第88回
結婚式の費用はムダにはならない

最近の風習として、結婚式は年々、盛大になっています。
その半面、結婚式を省略する人もあります。
結婚式の費用を新婚旅行に回すとか、
新しい生活のためにお金を倹約するとかいうのが、
その理由でしょうが、
それは、結婚式をどういうものとしてとらえるかによって
異なった解釈が生まれます。

自分たち二人だけのこととしてとらえるならば、
会費制にしてもかまわないし、
二人だけで教会で式を挙げ、
披露宴はいっさいやらなくてもいいし、
いっそのこと何もやらなくても差しつかえありません。

しかし、結婚式には、
親が子どもを手塩にかけて育ててきて、
やっと一人前になりましたといって
披露をする儀式という面もあるし、
また、結婚したことを他人に認めてもらうことによって、
お互いに縛り合うという意味も含まれています。

たとえば、百人の人たちに
「私たちは結婚します」と宣言しておいて、
そのつぎに会ったときにはもう別れていたというのでは
みっともないから、簡単に別れないという意味もあります。

いまの花婿花嫁の親たちは、
戦後の不自由な時代に結婚をしています。
おそらく結婚披露宴などやらなかった人もいるでしょう。
ですから、子どもの披露宴をできるだけ
にぎやかにやろうという気持ちの中には、
自分たちにできなかったことを、
子どもたちに代わりにやってもらおう
という願いがこめられていると思います。

私たちの場合は、香港で式を挙げたので、
当時としてはかなり盛大な結婚式でした。
ですから、親の代理結婚式ということはありませんが、
それでも、
「やっと一人前に育てあげたのだから」という気持ちはあります。
それに、私たちの場合は、親戚に結婚式があると、
集まって来ます。

娘の場合も、息子の場合も、
アメリカ、カナダ、台湾、香港、シンガポールの各地から
親戚一同が集まって来ました。

結婚式には、お金がかかります。
平均して三百万円以上かかると言われております。
よくしたもので、そういうときはそれに見合った
御祝儀が集まってきます。

もし、御祝儀で結婚費用がまかなえないとしたら、
親のふだんのつき合いがよほど悪いんでしょうね。
私の家では、三百万円や五百万円というお金では
間に合いませんでしたが、
足が出るということはありませんでした。





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2013年7月1日(月)

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