死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第89回
子どもの新婚旅行の費用は、出さないほうがいい

御祝儀の集まり方を見ると、
うちの息子も、だんだん強気になります。
この調子なら、新婚旅行も、
御祝儀のお金を使えるのではないかと考えて、
アメリカヘゴルフ旅行に出かける計画を立てたようです。

それに対して私は、
結婚式は家族の出来事だから、
お金の心配はするが、
新婚旅行は二人の新しい出発だから、
自分たちの貯金の中から出すのが筋道じゃないかと言いました。

うちの長男はすぐそれを了解して、
アメリカ行きがグアム島行きに変わりました。

たとえわずか三日間の短い旅だったとしても、
新婚旅行というのは、楽しいものです。
それも、自分たちの貯えの中から費用を払うのですから、
気前の良さと節約の精神の綱引きになって、
「ああ、新しい人生が始まるんだなあ」
という実感が湧き上がってくるものです。

もちろん、このことはお金の問題ではなくて
「けじめ」の問題であります。
自分の払うべきお金は金額のいかんを問わず
自分で払うのが当然でしょう。
それは親子のあいだであっても、それは変わりません。

男親は、とかく娘に甘くなりがちで、
新婚旅行ばかりか、新所帯の家具の費用まで与え、
そのうえ、洋服を買ってやったり
小づかいまでやったりするんです。

私自身も、娘にはかなり甘い父親でしたが、
結婚後、ほとんど金銭的な援助はしていません。
いつまでも親に頼る気持ちがあっては、
自分たちの家庭を築いていくことができないと思ったからです。

「お小づかいがもらえなくて最初はショックだったけど、
あれで良かったのね」と、娘もいまではこう言っています。





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2013年7月2日(火)

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