死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

不動産から学ぶ経済の成り立ち

第33回
利回りで見るワンルーム マンション(1)

そうした目で改めて地方都市を見ると、
「この土地はあがりそうだから、今のうちに買っておこう」
といった発想で、土地を買うより、
この町ではどんな商売が成り立つだろうか、
そういう商売をやるとすれば、
どの地点がふさわしいかというところから出発したほうが
よさそうである。

たとえば、大学がいくつもあるような学園都市とか、
東京や大阪の大きな会社の支店がつくられる九州ブロックや
北海道ブロックの中心地に行くと、
地方から集まってきた学生とか、
単身赴任のサラリーマンが多い。

これらの人々はかつてはアパートとか、
下宿住まいをしていたが、
国民一般の生活水準があがってきたので
ワンルーム・マンションに住む人が多くなった。

学生とサラリーマンを一緒くたにするわけには行かないが、
大学の近くにつくられたワンルーム・マンションは
学生からの巾込みが多いし、
学生の家賃は親が払ってくれるから滞納の心配はほとんどない。

また単身赴任のサラリーマンだと、
もう少し家賃が高くても大丈夫だが、
掃除から洗濯からメッセージの伝達まで
きちんとやってくれるところなら、すぐ満杯になってしまう。

他地方からの転任者でなくとも、どこの都市でも、
男女の独身者は必ず一定数あり、
しかもその数がふえる方向にあるから、
地方都市にワンルーム・マンションをつくると、
借り手には事欠かない。

その代わり田舎の人は、土地の信者ではあっても、
マンションを財産と見ることになれていないから、
マンションに食指を動かす人は少ない。

しかし、家賃は大都会に比べると、
うんと安いかもしれないが、
その代わりマンションの売値もそれなりに安いから、
売値に対する利回りは、大都会よりずっとよい。

たとえば東京や大阪では
五%以下の利回りになっているところが多いが、
地方都市に行くと、今でも八%以上に回る物件がたくさんある。

地方都市のマンションは東京のマンションのように
値上がりは期待できないかもしれないが、
利回りが八%以上あれば、投資の対象にはなる。





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2013年8月31日(土)

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