死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

不動産から学ぶ経済の成り立ち

第40
街の変貌を見越して投資

しかし、代官山が人気を呼び、
今まで洗濯屋や薬屋や、肉屋だったりしたところが、
ファッションの店になったり、レストランに変わったり、
あるいはケーキ屋に模様変えして行く流れで、
今度は大手不動産会社が目をうけるようになる。

森ビルによって開発されたラ・フォーレが
原宿をジャりの街に変えてしまったように、
東急不動産が代官山にある都営住宅を建てなおすようになると、
おそらく代官山もまたたちまち
ジャリの街と化してしまうに違いない。

それを見越して、またまた広尾に引っ越しがはじまったが、
広尾くらい急激に変化している街も少ないので、
元の住人たちが地価の暴騰によって少しずつ土地を手放し、
住人がすっかり入れかわらない限り、
広尾がお店屋にとって採算に合う街に変貌するのは困難であろう。

そうは言っても、坪当たり百万円か二百万円だった商店街が
三千万円、四千万円になれば、
少しずつ住人の入れ替えは進行するに違いない。

そして十年もたてば、
「年々人同じからず」ということが起こり、
やっと花の色がーそう鮮やかな
環境に変わることも充分考えられる。

だからファッションの街としての広尾の将来も
決してバカにしたものではないが、
しかし、おそらく広尾が開発される間に、
もうあといくつかムードのあるショッピング街が
東京には誕生することだろう。

私が予想しているのは、
渋谷が中心になって周辺に広がる形の展開であり、
したがって東急百貨店の裏側の松濤から富ヶ谷、
神山町という方向がそのーつ、
もうーつは代官山め延長線として
恵比寿から青山に抜ける広尾通りである。

ことに恵比寿駅から青山の富士写真ビルに抜ける通りは、
今は暗くて商店もほとんど見られないが、
私はいつかこの通りがファッション通りになるのじゃないか
という予感を持っている。

そこで、つい最近、この通りに面した
マンションの一階を一室手に入れた。
一方、富ヶ谷のほうも、
代々木八幡の駅前通りに土地を求めて
日本語学校の校舎を建てたが、
以上、いずれもまだほんのままごとていどのスケールにすぎない。

しかし、それでも自分が将来性ありと見たものは
一応唾をつけてみる。
実際に儲かるよりも、私の場合は、実験的な意味を持っている。

今までのところ、既存の投資はすべてうまく行っているが、
富ヶ谷や恵比寿に対する先行投資については、
あと十年くらいたってみなければ何とも言えないだろう。

同じ東京都内で安い土地や
安いマンションが値上がりする可能性を追求しようと思えば、
どうしても街の変貌する先を読んで
先行投資をする以外に方法はないのである。





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2013年9月7日(土)

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