死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

不動産から学ぶ経済の成り立ち

第77回
まだこれからのカナダ、豪州

かつてのイギリスの植民地だった地域では
カナダとオーストラリアが外国資本の投資に対して
門戸をひらいている。
日本人はあまりカナダに目を向けないが、
香港の人たちは移住が比較的自由なこともあって、
トロントやバンクーバーの不動産を買う人は多い。
ただし、土地が広大なのと、広大なわりに人ロが少なく、
その人口がまた都市に集中しているので、
投資はほとんどが大都市のビルや住宅に限られている。

土地が値上がりするかどうかは、
産業の発展に大きく左右されるから、
カナダの不動産の値上がりはスローテンポであり、
チャイナ・タウンのような特殊な地区を除けば、
あまり国際的な投資家たちの関心をひかない。

その点、オーストラリアに対しては、
香港からの移住を希望する中国人が多いせいもあって、
香港からの不動産投資も盛んだが、
どういうわけだか、
日本人の中にもゴールド・コーストへの投資勧誘に乗って、
オーストラリアで不動産を買う人は多い。

東京の土地暴騰で二十坪のマンションが
一億円もしたりすることが念頭にあるので、
プールつきの二階建てがわずかの一千万円か、
一千五百万円で手に入るのを見ると、
思わずとびつきたくなるのであろう。

カナダでもオーストラリアでもそうだが、
土地の広大なところでは、
日本のように坪当たりいくらという観念がない。

土地を買う時に、一スクウェア・フィートいくらといった取引は
行われるが、空地は収入をもたらさないので、
土地担保では銀行もお金を貸したがらない。
その土地の上に、ビルや住宅を建てて、
それがいくらに貸せてどれだけの年収があるかによって
はじめて財産価値が生ずるのである。

土地が広大なところだけに収入をもたらさなければ駄目だし、
収入が多いか少ないかは産業の発展とかかわりがある。
また海外からの投資ということになると、
為替レートの変動によって財産価値の評価が大きく左右される。

オーストラリアの場合はードル=百六十円もしていたのが
百円といった急激なドル安を起こしているので、
円をオーストラリア・ドルに換えて投資した人は
円建てで計算すると、かなりの損害を蒙っている。

しかし、日本人とオーストラリアは合性がよいと見えて、
かなりの為替差損を出しても、
オーストラリアに対する投資熱は依然として高く、
投資目的でゴールド・コーストを訪れる日本人の数は
日増しにふえている。

あれこれ比較対照をし、長短相比べてみると、
ありあまる日本の資金が投資できる対象は、
結局のところ、アメリカか、
でなければ香港にしぽられてしまう。
香港は狭いところだし、
一九九七年の返還という問題も抱えているので、
そうした前提に立ったごく限定的な投資レか期待できないが、
アメリカの不動産への投資は、
日本国内での不動産投資が行き詰まるにしたがって、
次第に拡大する傾向を見せている。





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2013年10月14日(月)

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