至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第9回
はれの日、何を着ますか

新年、あけましておめでとうございます。
お正月は日本人にとって、はれの日ですね。
はれの日といえば、たまの外食には
どんな服装で行きますか?

イタリア旅行をした友人が、
あるとき、こんなことを言いました。
「日本人はリストランテで、
ここぞとばかりに着飾るから恥ずかしい」と。
たぶん
高価な服を着た、無理してる感じが
彼女にはカッコ悪く見えたんだろうな、と思います。

あえて肩の力を抜く。そういうお洒落の方が
たしかに達人的な気もしますが。
でも、と私はイタリアで出逢った女性たちを
思い浮かべました。

あるリストランテでは
高齢の女性が、慎ましいセーターに
年代物だけれど美しいスカーフを巻いて
テーブルに向かっていました。
それは肩の力を抜いたのでなく
逆に思い切りがんばったというか、
スカーフが彼女にとって
一張羅のシンボルだったような印象でした。
またある店では、
イタリア人の新婚旅行らしきカップルが
洋服に不似合いな、燦々と煌めくネックレスをつけ
しかし楽しそうに食べて、飲んでいました。
ちなみにそこはトラットリア。
スタッフはラフなTシャツなのに
客は皆とても着飾っていて
ジーンズをはいていたのは私だけでした。

彼女たちの基準は、
自分が精一杯のお洒落を楽しんで
スペシャルな一晩の食事をおいしくいただくこと。
それだけが真実だと思うのです。
肩の力を抜く、というのは
お洒落の高等技術のひとつであって
それを使っても使わなくても構わないもの。
誰が決めたか知らないマニュアルを吹き飛ばす彼女たちは
骨太に美しく、生命力に溢れています。

いいじゃないですか、張り切り過ぎたって。
全身シャネルだっていいし(それができる人は)、
逆に、家にあるいちばんいいシャツに
アイロンをかけて着たっていい。

要は自分がウキウキできるような服装で
もっと素直に食事を楽しめばいいのだ、と
あの日、あのトラットリアで
ジーンズの私は心底そう思いました。


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