至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第14回
シングルモルトに入門した日

バーには流儀があるといいます。
いや、流儀なんてないよという人もいます。
流儀はない、といいながら
実は厳しい店もあります。

だからバーは敷居が高いのですが
でも、本当にそうなのか体当たりで確かめてみたい。
というより、仕事帰りや
気分のいい日、悪い日
ふらりと寄れば、いつでも迎えてくれる
行きつけの店が何軒かあると
うれしいですよね?

私は
お酒は好きだが詳しくはない
飲むけれど強くはない
知りたがりのくせに記憶力がない
第一、流儀を知らない普通の女性です。
バーという聖域で、せめて浮かないように、
でもビクビクせずに
お酒と人と時間を楽しみたい。

練馬にある『モルトハウス アイラ』の扉を開けました。
ここは硬派なオーセンティック・バー。
モルト好きの間では
有名なバーのひとつだそうです。

最初に行ったのはたしか1、2年前。
仕事を通じて知った
ある国産シングルモルトを
どうしても味わいたくなったのですが
それを置いてある店は、当時都内に数軒しかなく
その一軒がここでした。
そして、
取材を抜きにして、ひそかに客として
カウンターの端っこに座ったのです。

バーですから、2軒目に行きました。
お目当てのお酒は
ニッカウヰスキーの「余市 10y カスク・ストレングス」。
かつて(2001年)、『WHISKY Magazine』誌
(英・ザ・ウイスキー・パブリッシング・カンパニー発行)
によるテイスティング評価BEST OF THE BESTの
ジャパニーズ・ウイスキー部門で
最高得点を獲得したこともあるシングルモルトです。

ストレートでひとくち含めば
そのとろりとした液体は、
薫香を放ちながら、まろやかに落ちていきます。
マスターの、
流れるような口調で語られるお酒の話にも
すっかり感心して
“教科書”にと土屋守さんの
『モルトウィスキー大全』(小学館)という
サイン本まで購入した私は、上機嫌で
椅子を降りました。

と、マスターがさりげなく
「今度は早い時間に、1軒目でいらしてください」
そう真面目な顔で言ったのです。
空きっ腹に、1軒目からモルトですか!?
とびっくりした私に、
そのほうが味が鮮明にわかるとのだと
教えてくれました。

かつての、あの約束を果たすため
行きましたよ私は、空きっ腹で。
仕事を終えた、ある日の午後8時に
やる気満々でドアを開けました。


■モルトハウス アイラ
東京都練馬区豊玉北5-22-16 キジマビル2F


←前回記事へ 2004年1月8日(木) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ