至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第16回
『来夏世』の八重山そば

2ヶ月ほど前の話になりますが
行って来ました、沖縄は石垣島と竹富島へ。
大事な目的のひとつが、八重山そば。
沖縄そばの一種というか、
本島に行けば沖縄そば、宮古島なら宮古そば、
そしてこの八重山諸島では八重山そばと呼ばれています。

本島と宮古島にも行ったことがあるけれど
どれも本来、基本的には小麦粉に灰汁(あく)の
上澄み、または漉し汁を練り込んだ麺を使い、
豚骨ベースにかつおや昆布だしの汁。
でも今では灰汁を使用しないところも多く、
島によってバージョンが違ううえ
さらに同じ島でも、店によって個性がいろいろです。

八重山そばは、かつおと昆布の利いただしが多いようで、
トッピングも
砂糖と醤油で煮た豚肉、地元で天麩羅といわれる蒲鉾を
どちらも細切りでのせています。

これにヒバーチ(またはピィヤーシ。地域によって
呼ばれ方が変わる)という、
これまた地元の香辛料をかけていただきます。
コショウ科の植物ですが、普通のコショウのような辛さでなく
ほんのり甘辛い独特の香りが、
だしの旨みを引き立てて
素のときとはまた全然別の味わいに変わるのです。

石垣島・竹富島と合わせて、6軒食べ歩きました。
どれもおいしかったけれど、なかでも
私のお気に入りは石垣島の『来夏世(くなつゆ)』。
石垣小学校の裏手に、静かに佇む一軒家です。

門を抜け、小さな階段を数段上がって引き戸を開けると、
中は土間にテーブル、右手に広い板の間。
靴を脱いで上がれば
素足に板の感触がひんやり伝わります。
すぐそこにある小さな庭では
真っ黒けに日灼けした子ども達が数人、
石塀によじ上って元気に遊んでいました。

この店は、ひとことで言うと夏の家。
風の通る、気持ちのいい場所。
大きな窓から流れる風に、ふうっとひと息つきながら
お目当ての八重山そばを待てば
ゆっくりと気持ちが解き放たれていきます。

おばあが作るつゆは
豚骨に昆布が少し入っているそうですが
金色に透き通って、
コクがしっかりあるのに、不思議とあっさり。
そして海の香りがふうわりと鼻に抜けていきます。
麺はたまご色のストレート。
その独特の歯ごたえは
もそっというか、ぽそっというか、
パサパサではなく、なんというか絶妙に素朴なのです。

帰り際、調理場に
「ごちそうさまでした」と声をかけると
やはり日に灼けた、小さなおばあが
はにかんだような笑顔でおじぎをしてくれました。


■来夏世(くなつゆ)
沖縄県石垣市石垣203 TEL 09808-3-7577


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