至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第50回
冬だけのおいしさ「モン・ドール」

一度食べてみたかったんです。
ずっと冬が来るのを待っていたんです。
「モン・ドール」は冬期限定のチーズ。
フランスとスイスの国境、
モン・ドール=黄金の山で作られる
山のチーズです。
製造解禁日が8月15日〜3月31日までと
決まっているため、私たちが買うことができるのは
冬だけになるのです。

スイスにもありますが
フランスでは、標高の高い場所で育った牛の無殺菌乳を使い
エセピア(もみの木の一種)の樹皮で囲み
塩水で洗いながら熟成させるそうです。
樹皮で囲むのは、そうしないと形が崩れてしまうほど
柔らかいから。そして
チーズに木の香りが移り
何ともいえない芳香が……という前知識で
ついに、憧れの「モン・ドール」を手にしました。

友達の家にお呼ばれしたとき
ワインと一緒に買っていったのですが
こんな機会でもないと、
普段の食事で
3000円ちょっとしてしまうこのチーズを
買う勇気はありません。

さて、エセピアの木箱にすっぽりおさまっている
白カビふかふかの表皮に
十字の切れ目を入れてスプーンですくってみます。
ああ、これがやりたかった!
「モン・ドール」はあまりに柔らかいので
切り分けるのでなく、
すくって食べるのが正解です。
スプーンを持ち上げると、ねっとりとした
クリーミーなチーズが
とろとろ〜ん。
一口含むと、舌の上でとろけて、木の香りがふわり。
これがエセピアというものの香りかぁ、と
確認しながらゆっくり味わいます。

私としてはウォッシュタイプのチーズなら
あの漬け物臭というか、独特の臭みがいいと思うのですが、
同じウォッシュでも
今回の「モン・ドール」には強烈な臭みがなく、
味わいもかなりマイルド。
その代わり山のミルクから生まれる
深いコクが楽しめました。

私たちはバゲットと一緒に食べましたが
茹でたじゃがいもにつけたり、
また、白ワインを混ぜて
パン粉を振り、オーブンで焼いてもおいしいとか。
それににんにくを加える人もいるようです。
(※木箱が燃えないよう、アルミホイルでガードすること)

この冬の間に、できればもう一回
チャンスを作って誰かの家に遊びに行きたいと
ターゲットを探しています。
今度こそは、じゃがいもとパン粉と白ワインも
持って行かないと。


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2004年2月27日(金)

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