至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第68回
『チェントルーチ』(後)・野菜の贅沢

三軒茶屋の商店街の端っこにある
『チェントルーチ』。
私が食べたのは、夜の3,500円〜のコースです。
日替わりのプリフィクスで、
冷たい前菜、プリモピアット、セコンドピアットを
それぞれ1品ずつ選びます。
セコンドはプラス料金(この日は1400円前後)がかかり、
じつは私、このプラス料金なるものに出合うと
なんともモヤモヤした気持ちになるのですが、
この日は思わず「なるほど」と頷きました。

上記3皿の他に、
「有機野菜の旬の一皿」という温かい前菜があるのです。

冷たい前菜の後に供されるそれは、数え間違えがなければ
この日12種類もの野菜が盛られていました。
しかも1種ずつ、茹でたりグリルしたり
フリットにソテーにと、バラエティ豊かな調理法で。
肉厚のしいたけはジューシーなフリットになっていたし、
皮付きのまま茹でられたにんじんはなんとも甘く、
紅菜苔(こうさいたい)という中国野菜を炒めたものは
オリーブオイルの風味とよく合います。
もちろん
プリモの「熊本スミイカと緑野菜のタリアテッレ」も
セコンドの「沖縄豚頬肉のパン粉焼き」も
丁寧な仕事を施してあり、おいしかったけれど
この野菜の一皿には
特別な思いが込められている気がします。

もともと須賀シェフは、大のお肉好き。
それが店を構えるにあたって
情熱的な農家の方々と出逢い、その野菜の
あまりのおいしさに感動したのだとか。
そして彼自身も
「子どものために長生きしたいなって(笑)」

以来、顔と人柄を知っている農家の
真っ当に育てられた野菜にこだわって
「最初は暇だったから良かったけど、
忙しくなってもやめられなくなっちゃった」
と困った笑顔を浮かべつつ、
小さなお店の限りある冷蔵庫内を
野菜だらけしながら奮闘しているようです。

子どもの保育園の都合でこの場所に店を構え、
家族のために自ら野菜に目覚めた
須賀シェフの皿は、とても優しい印象です。
おそらく、彼がお店で提供しているのは
自分の家族に食べて欲しい食材であり、料理
なのではないかと感じました。

最後に、スポーツをやっていたというので
その体型ゆえ「ラグビーですか?」と当てにいった私に
彼は「ボクシングなんですけど」と一言。
びっくりです。
戦いという言葉がまるで想像できない。
ボクサーとはリングを降りると
かくも穏やかな目をした人種なのでしょうか。


■チェントルーチ
東京都世田谷区太子堂2-4-11 TEL 03-5430-6129


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2004年3月24日(水)

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