至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第103回
信州から、チーズと春の宅急便

待ちに待った日が来ました。
ピンポーン!と
呼び鈴がなるやいなや印鑑を手に玄関へ飛んでいき
宅急便屋さんへの挨拶もそこそこに
ニヤニヤと包みを開けます。

と、そこには長野・清水牧場からの
チーズが2種。
「ご注文を頂きありがとうございました」と書かれた
絵葉書(ロマノフ羊とひつじのチーズの2ショット)のほか
「羊の出産シーズンです」と添えられた親子羊の写真、
そして
つぼみがふっくらしてきた桃の小枝も
それらと一緒にやってきました。
山の春の宅急便です。

清水牧場は
浅間山と蓼科山の麓、北アルプスを望む場所にある
家族経営の小さな牧場。
ウラウンスイス牛30頭、緬羊20頭と
犬3匹が一緒に暮らし、
チーズやヨーグルトを作っているのだそうです。

私がこの牧場を知ったのは
チーズ教室で、たまたま昨日届いたばかりだという
リコッタチーズをいただいたのがきっかけです。
リコッタは乳清から作られるチーズですが
清水牧場のリコッタ「プティ ニュアージュ」は
その日の朝に搾ったばかりのミルクから作って
4日以内に食べなければならないとのこと。
へぇ〜と軽く頷きながら
それを一口含んだときの感動ったらありませんでした。

舌にのせるとふうわり、ふうわりほどけながら
フレッシュなミルクの
香りとコクが膨らんでいきます。
そして驚くほど、甘い。
もちろん、砂糖などを添加した甘さではなく
たとえば人肌に温めた
ホットミルクの甘さを想像してもらえれば近いでしょうか。

これに、はちみつやメイプルシロップ、
ヴィンコット(葡萄果汁を煮詰めたもの)などをかけても
おいしいそうですが
そのままで食べるのがいちばん贅沢な気もします。

そこで、さっそく先生に牧場を訊き
「プティ ニュアージュ」と、もうひとつ
「森のチーズ」という
ウォッシュタイプのチーズを届けてもらったわけです。
「森のチーズ」は塩水で何度も
ウォッシュ(洗うこと)したクセのあるチーズ。
2ヶ月間の熟成だそうですが
もっと熟成して臭みが増しても、さらにおいしそう。
同封のプリントに書かれた
セミハードタイプの「山のチーズ」や、
春〜夏限定の「羊のチーズ」も気になります。

桃の小枝を
スパイスの空き瓶に差してテーブルに置きました。
すると東京のぬるい空気のせいなのか
翌朝、つぼみたちはいっせいに可憐な花を咲かせていました。
信州の桃は、もう咲いたのだろうか。
ああ、春の香りをおなかいっぱい吸いに
清水牧場へ出かけたいなぁ。


■清水牧場チーズ工房
長野県北佐久群北御牧村御牧原4513 
TEL 0268-67-3632 FAX 0268-67-3671
e-mail svarasa@avis.ne.jp


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2004年5月12日(水)

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