至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第104回
マンマの味とポルトガルワイン

渋谷・松濤で(第93回参照)
すっかりポルトガル料理にはまった私は
わずか2週間後、
四ッ谷にある姉妹店
『マヌエル カーザ・デ・ファド』の
テーブルに座っていました。

どちらも総料理長はマヌエル・ペナ氏ですが
シェフが違います。
松濤はマカオで、四ッ谷はポルトガルで
かつてお店をやっていた経験があり
後者は女性。
でも、食べ比べと言うよりも
ひとつでも多くポルトガルの味を知りたくて
「行く?」「行く行く!」
というノリで
食いしん坊仲間と3人でやってきました。

シェフが女性だから
なのかどうかはわかりませんけど、
四ッ谷の味は、マンマの味。
名物のバカリャウ(干しダラ)は
コロッケにして揚げたものと
マリネにしたものの2通りをいただきましたが
どちらも優しく、それでいて芯が通ってる感じ。
豆とお肉を煮込んだフェジョアーダや
魚介のスープがしみ込んだリゾット
アロス・デ・マリスコなどは、
「たんとお食べ!」
という肝っ玉母さんの声が聞こえてきそうです。

そしてここで特筆すべきは
とにかく種類豊富なポルトガルのワインです。
が、ポルトガルは土着の葡萄品種が多く
何を頼んでいいのやら
初心者には全然わかりません。
ということで
ソムリエ・田村理宏さんのナビゲートに
お任せしました。

食前酒には
ホワイトポートとレモンのカクテル。
渇いた喉に心地いい清涼感です。
マリネに合わせたのは
ポルトガルならではの
ヴィーニョ・ヴェルデ(微発泡の白ワイン)
「アルバリーニョ ムーロス・アンティゴス 2002」。

そして田村さんが「今イチオシです」と
オススメしてくれたのは
「キンタ・ド・コルジャォン コレイタ 2000」。
ダン地方の赤ワインです。

最初のひとくちでは
人見知りして、あんまり正体を現しません。
(友人はやんちゃ坊主と表現していました)
それが時間とともに、
どんどん、どんどん香りが膨らみ
味が変化していく。
おいしいごはんを食べて
仲間同士で話が盛り上がるのと同じペースで
ワインも私たちに
止めどなくおしゃべりしてくるような
そんな1本です。

私たちが
この人見知りの赤ワインと仲良くなり始めた頃、
ふいに照明が落とされ
キャンドルだけの灯りになりました。
さあ、ファドのライブが始まります……。


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2004年5月13日(木)

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