至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第109回
イタリア式、人生の楽しみ方

連休中、ホームパーティーにお呼ばれして
イタリア食文化の専門家、長本和子さんの
お宅へ遊びに行きました。

繰り返しますが
イタリア食文化の専門家ですから
おいしいものに出合えるに違いない!
と、道すがら
ニヤニヤしてしまったのは言うまでもありません。

はたして屋上のテラス、青い空の下で
冷えたスプマンテをあけるのは格別に爽快。
見渡せば新緑が深く茂って
イタリアの家庭にお邪魔しているような感覚です。

そしてお手製の
ムール貝とじゃがいも、玉ねぎのオーブン焼きや、
プニュプニュッとした食感が楽しい
スペルト小麦のサラダ「ティエッラ」などを
堪能したあとは、
いよいよ真打ちの
「インパナーダス」が登場。

これは
羊の肉とじゃがいも、ドライトマトに
ローズマリーと塩、オリーブオイルを加えたものを、
小麦粉にラードを混ぜた生地で包み
オーブンでこんがり焼き上げるのだそうです。
きつね色の蓋を切り取ると
中から香ばしい香りがぐんぐん立ち上って
一同、思わず「おおおっ」。

「インパナーダス」は
サルデーニャ島の伝統料理なのだとか。
地中海に浮かぶこの島は
シチリア島に次いで、イタリアで二番目に大きく
四国とほぼ同じ面積です。

じつはサルデーニャがテーマだと
前から聞いていた私は
酒屋でサルデーニャのワインを探しておりました。
しかし最近
サルデーニャ料理はあんなに人気なのに
ワインとなると、
街の酒屋ではほとんど扱っていません。

走り回ってやっと1本、見つけたのが
「タンカファッラ 1999(セッラ・エ・モスカ社)」。
葡萄は土地の品種であるカンノナウと、
カベルネソーヴィニヨンです。
おみやげにしては
申し訳ないくらいの手頃なお値段ですが
いやいや、この99年は
ほどよく熟成感があり、なかなかにおいしいのです。

サルデーニャ島で育ったワインと
その島の伝統料理が、今この日本で巡り合ったわけだ。
……なんて、
妙な感慨に浸りながらも、グビグビ、グビグビ。

招待客のひとりである
イタリア人の男の子が焼いた
「カンノンチーノ」というお菓子を頬張る頃には
ペールオレンジの夕焼けが、テラスを包みます。

「こんな時間が人生いちばんの贅沢よね」
と、長本さんが
しみじみ放つ言葉に頷きながら、
もしかしたらこういうのがイタリア式の人生なのかなぁ、と
ワインでポーッとなった頭で考えていました。


←前回記事へ

2004年5月20日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ