至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第114回
単身赴任でチャンスに懸ける

浅野屋は、軽井沢のおいしいパンの老舗ですが
その東京・四谷店2階に、
同店経営のリストランテ『チェッピーノ』があります。
あるお食事会のとき、そこで食べた
仔牛トリッパのサルシッチャや
伊達鶏とレバーのタリオリーニがおいしくて
先日また、足を運びました。

というか、告白すると
もっといろんなお料理を食べてみたいという気持ちと
あんな気持ちのいいサービスは久しぶり
という嬉しさが、半々だったかもしれません。

サービスの小泉宏生さんは、しかし本当は料理人です。
じつは当初、シェフふたり体制の予定だったのが
昨年11月に正式な話が決まり
12月2日にはもうオープンという猛スピードの中で
サービスだけが不安材料だった。
そこで
料理の内容などはふたりで考えながら、
スタッフが育つまで
性格的に向いている小泉さんが
営業中のサービスを担当することになったのだそうです。

彼は、三重県の高級リストランテで5年間
シェフを務めていましたが、2ヶ月に一度上京しては
東京でのチャンスを探していたそうです。
なぜ東京なのか、訊ねると
「すごい料理人たちの隣で挑戦してみたかった」
と彼は言い、そして今、妻子を三重に残して単身赴任。
関係ないけど銭湯に通ってます。

妻子を残し、というのは実は2度目で
イタリア修業も
「後悔するくらいなら行ってきて」という奥さんの言葉に
「絶対後悔するから行ってくる」と答え
1年だけの約束で旅立ったのだとか(結局4ヶ月延びましたが)。
道理で、イタリアでの彼の足跡は
トレンティーノ=アルト・アディジェから
エミリア・ロマーニャ、トスカーナなど
1年4ヶ月の間に6店舗を、めいっぱい回っています。

家族を日本に残して修業するコックは結構いますが
やはり、自分の意志と、家族の気持ちや事情に
折り合いをつけるのは非常に難しい。
しかし小泉さんと話していると
実際はいろいろあるのでしょうが、なんだか
軽やかで前向きな印象なんです。

彼のサービスが気持ちいいのは、
シェフの経験があるから全体に目が行き届くのかな、とか
料理に関して何を訊いてもわかるし
などとも考えてみたのですが
やっぱり、人柄だという気がします。

彼の料理も食べてみたいし
サーラから小泉さんが消えてしまうと寂しいし。
そう訴えると
「ついこの前、社長にも言われて」
と、困った笑顔を浮かべる彼です。


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2004年5月27日(木)

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