至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第115回
同期ふたりで作るリストランテ

『チェッピーノ』のディナーAコースは
アンティパスト、プリモ、セコンドのプリフィクスで、
それにストゥツキーノ(つきだし)と
ドルチェ、カフェでしめて4,500円(税込4,725円)。
私はずいぶん迷って
ホワイトアスパラガスのグリル、
キタッラ(ギターに似た形の調理器具で作るパスタ)、
そしてシェフのスペシャリテである
沖縄産やんばる島豚のコトレッタを選びました。

仔牛のトリッパ(胃袋)と自家製サルシッチャ(ソーセージ)の
ラグーでいただいたキタッラは
深みがあってまろやかな、すごくいい味。
独特のコトレッタは、厚さ4cmほどの分厚い骨付き肉に
カツレツ風の衣をつけて、カリッと焼き上げたもの。
きつね色のそれを切り分けてもらうと
中は湯上がりみたいなほんのりピンクで、
脂が、それはそれはジューシー。
ただし迫力たっぷりなので、勝負!な感じです。

佐賀県出身の本村逸人シェフは
福岡のイタリア料理店を経て上京、片岡護氏や寺内正幸氏など
錚々たるシェフの下で3年ほど働きましたが
一時「別の仕事をしようか」と
リストランテを離れた時期もあったとか。
理由を訊くと
「自分は要領悪くて」
とポツリ、答えてくれました。

みんなが「彼は口下手」と口を揃える本村シェフは
しかし、ポツポツとではありますが
自分のペースでゆっくり丁寧に、しっかり話す人。

当時も、上京してからアパートと厨房の往復だった彼は
店を辞め、無国籍料理店でアルバイトして初めて
友達が増えて、仕事や旅行の楽しさに
目覚めたのだそうです。
で、「イタリアに行きたい」と思うようになったのだとか。

イタリアでの修業は約2年間。
フィレンツェ『ヴェッキオ・ムリーノ』、
ヴェローナ『ガッビア・ドーロ』を経て、
ミラノ『サドレル』では魚料理を、
同じく『ジャンニーノ』ではパスタを担当。
途中、短期間クレモナやリグーリアの店も経験しています。

日本では『ペコラ』や『アカーチェ』の後、
『マッサ』でセカンドコックを務め、
『セレニータ』(現タベルナ・ヴィヴァーチェ)のシェフ、
『ラ・グロッタ』、で、ここ。
経験は充分。あとは
自分のペースでゆっくり丁寧に、進むだけです。

本村さんと、前回の小泉さんは
イタリア研修生時代の同期生で、キャラが全然違います。
なのにイタリアでは一緒に食べ歩き、帰国後も度々会っていた
というので「仲いいですね」と言うと
ふたりとも「いいのかなぁ」と笑う。
それぞれの役割があって、それがたぶん一生変わらない。
この店が家族経営に似た雰囲気をもつのは
同期という、特別なつながりのせいでしょうか。


■CEPPIINO(チェッピーノ)
東京都新宿区四谷4−4−12 浅野ビル2F
TEL 03-3359-4311


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2004年5月28日(金)

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