至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第142回
頭のいいサービスの快感

何も、一生懸命尽くしてくれるのが
いいサービスなわけではない
ということを、あらためて再確認しました。
『ブーケ・ド・フランス』のサービスを取り仕切る
マダム、原田陽子さんは
けっしてやわらかく優しい口調ではなく
むしろ素っ気ないくらいさばさばしているのですが
この人に任せておけば安心だ
という感覚を
自然と他人に与えてしまう才能があるようです。

この夏結婚する友人のお祝いに
久しぶりのメンバーで
『ブーケ・ド・フランス』を再訪しました。
数年前、オープンしたばかりの頃に
ほぼ同じ面々で訪ね
今よりちょっと若かった私たちは
原田さんに
あれやこれや質問しては
豚肉料理のおいしさに絶叫し
お腹をポコンと膨らませて帰った記憶があります。

彼女の対応は、その時も今も的確。
メニューリストを見ずに
淀みなく自分の言葉で料理の説明がなされ、
ワインについて質問しても、曇りのない答が返ってくる。
自分が知らないことを
中途半端に言わない人だということは
少しやり取りすれば、すぐにわかります。

『ブーケ・ド・フランス』といえば
豚肉料理でよく知られていますが
やはり、メニューを広げると
アミューズから前菜、主菜まで
すべて肉で通してもいい!
と思うくらい、肉料理にググッと針が傾きます。
(まぁ、魚料理は品数が少ないということもありますが)
しかし、彼女の説明を聞いているうち不思議と
「夏野菜のテリーヌにオマール海老を添えたもの」
にもまた、グググーッと針が盛り返してきたりして、
結局、前菜は野菜、
主菜はイベリコ豚のロースのソテーに着地。
デザートはその名も「キャラメルづくし」。
沖縄の黒糖入りキャラメルアイス、
キャラメルのケーキ、
宮崎の鶏の卵で作ったキャラメルプリン。

じつは予約時に、「結婚祝いなんです」と伝えておいたので
デザートの皿に
友人の名前と「ご結婚おめでとう」のフランス語が
チョコレートで書かれておりました。
そこまでは幹事も知っていたのですが
さらに、キャンドル演出というサプライズもあって
一同、大喜び。
単純なことかもしれませんが、
パチパチ弾ける火花に、やっぱり心は浮き立ちます。
本日の主役の真っ赤な笑顔が、それはもう幸せそうで
一同、いいなぁ結婚! と
ある者は空想し、ある者は回想してポワ〜ン。

帰り際、みんなを見送りがてら
原田さんは、彼女に
「今度はご主人も一緒にいらしてください」
と一言。
「はい、ぜひ」
と答えた彼女は、きっと社交辞令でなく
そして女5人ではなく
彼とふたりでこの店へ来たいなぁ、と思ったはずです。


■Bouquet de France(ブーケ・ド・フランス)
東京都港区六本木7-8-19 小林ビル2F TEL 03-3497-1488


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2004年7月6日(火)

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