至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第149回
商店街でリストランテを育てる

イタリア料理店『フィオッキ』は、
トラットリアとして
2000年にオープンしましたが
「もっと落ち着ける空間にしたい」と
今年、店内を少し変えたそうで
トラットリアというより、リストランテの印象です。

レイアウトだけでなく
メニューも、アラカルトをいったんやめて
今のところコースのみに絞りました。
プラス料金なし、コペルト料金525円明記。
私は4725円のコースを頼みましたが、
ストゥツキーノ…豚レバーパテとフレッシュトリュフ
アンティパスト…天然岩がきと
 冷製パッパ・コル・ポモドーロ
スープ…金時豆・うずら豆・白インゲン豆の裏ごしスープ
プリモ…小海老とリコッタリーズのトルテッリ
セコンド…骨付き仔羊のわら包みロースト
ドルチェ…チョコレートのプリン
という流れ。
スープが別立てになっているところをみると
おそらく堀川シェフが
こだわっている部分なのでしょう。

そして、いよいよ楽しみにしていた
仔羊のわら包みロースト。
焼き上がったそれを、一度、わらに肉が包まれた状態で
目の前で見せてくれ、
その後キッチンでわらを外してから
皿に肉が盛られてきました。
肉をひとくち、口に入れた途端
その香りに驚きました。
なんとも個性的で豊かな香りが
仔羊のやわらかな肉に
しっかりと含まれているのです。

堀川シェフがこの料理を習った
イタリアの『フリッポー』(前回参照)では
麦のわらやイラクサなどのほか、
種々雑多な干し草を使うそうですが、
『フィオッキ』では米のわらを使います。
乾燥させたハーブも加えます。
あとからあとから、鼻に抜ける芳香……。
日本から海を渡って
北イタリアの渓谷で修業した青年が
ヴァルド派の伝統料理を
今、自分の街へ持ち帰り
自分のやりかたで表現していることが
不思議で、楽しくてなりません。

もちろん、地元の人が受け入れてくれるかどうか
という問題はあります。
これから
祖師ヶ谷大蔵という各駅停車の街の商店街で
自分の目指すイタリア料理店をどう実現していくか、
店内やメニュー構成を替えたり
堀川シェフは
試行錯誤している真っ直中だと言います。
お客さんを育て、お客さんに育てられ
10年後、20年後
このイタリア料理店が
どんな風に成長しているか、楽しみです。


■Fiocci(フィオッキ)
東京都世田谷区祖師谷3-4-9 TEL 03-3789-3355


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2004年7月15日(木)

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