第82回
パートナーは自分を映す鏡です

先日、夫とちょっとした口論となりました。
張り詰めた空気を犬が感じ取るのかどうか、不安そうに鼻を
鳴らして二人の間を行ったり来たりしていました。

原因は夫の仕事に対して私が、
「これはやめた方がいいんじゃない？」とか
「それをやっても大丈夫？」などという意見を言った事です。
夫の反応がちょっとムッとしている事に気付きながらも、
自分の思った事を素直に率直に言っているのだから何も悪い事
はしていないと自分で思っていました。
そしてその場はそれで収まりました。

ところが、しばらく時間をおいてから夫が側に来て言いました。
「さっき、ああやって言われた時にすごい嫌な気分がして
ムカムカしたんだ。　どうして嫌なのか考えたんだけど、
やめた方がいいとか、大丈夫って聞かれると自分のやりたい事が
のびのび出来ないことに気付いたんだ。
それに、心配されると、自分が能力のない人間だと言われている
ような、信頼されていないんじゃないかと感じてしまうんだ。
それからチエコの発言は俺の中の問題を言っているのではなくて
チエコの中にある不安の問題だと思うんだ。」

私は、さっき夫のムカムカ反応に気付いていながら、
その場は収まったのでムカムカに気付かない振りをしていたので
夫が自分の気持ちを打ち明けてくれたことが嬉しくなりました。
と同時に、自分は夫を批判するつもりで言ったのではなく、
素直に思ったことを言ったのだから何も悪いことはないと
ムカッとしたのです。
私は、言い返しました。
「私はただ自分の思ったり感じたりしたことを素直に言っただけで
べつにあなたを批判するつもりで言った訳じゃないの。
それにあなたの事を信頼しているから、思っていることを全部打ち
明けてもいいと思って言ったんだからね。
もしムカムカと来たのならそれを受け取るあなたに何か問題が
あるんじゃないの？」
意外にも夫は素直にその言葉を受け止めてくれました。
「そうか。。。そう言えばどうしてムカムカするんだろう。
今まで考えたことなかったなあ。」

私は夫のその素直な態度を見てハッとしました。
そういう私も夫に言われてムカムカしたことに気付いたのです。
私は昔から、批判されたり注意されたりするのが大嫌いで、
その批判や注意が的を得ていればいるほど激しく抵抗や否定して
来ました。
私も本当は心の中で夫によくないことをしてしまったと気付いて
いたのでムカムカしたのです。
確かに夫の言うように、私は自分の不安や恐れから生まれた感情を
ぶつけていたのでした。

そして大切な事に気付きました。
『私は、自分の言いたい事を言っただけで、夫が必要としている
ことを何も考えずに反応していた』ということに。
自分の立場や意見を主張するというあくまでも自己中心的であり、
夫の成長や為になるのはどういうことかという相手の事を考えずに
夫に接していたことに気付いたのです。

２人で素直に話し合った結果、お互いに大切なことに気づくことが
できました。　もし最初に湧いたムカムカ感情をこのまま無視し
続けていたら積もり積もって大きな問題に変化していたかもしれ
ません。
パートナーは自分を映す鏡です。
近い立場にあるからこそ自分の未熟な部分が相手の態度に表れます。
相手が怒ったり自分が怒ったりしたら、それを相手のせいにして
いても何も改善されません。
もし鏡の中の自分の髪の毛が跳ね上がっていたら、
鏡の中の自分を指差して、「髪の毛直したら？」と注意する人は
いないでしょう。自分自身の髪の毛の跳ねを治すでしょう。
同じように夫婦の反応を見て、「あなたが悪い、あなたが直せ。」
といっても本当に直ることはないでしょう。