第96回
高級デリでの庶民的な心配事

友人Ｍ子から電話があり、
「暗い映画の試写会があるのだけど行かない？」
というお誘いがありました。
映画の前に、雑誌などで見て気になっていた
ＤＥＡＮ＆ＤＥＬＵＣＡ（ディーン＆デルーカ）へ寄りました。
ＤＥＡＮ＆ＤＥＬＵＣＡとは、
ＮＹを拠点とした高級グルメストアで、
最近東京・丸の内にオープンしたのです。
本当にオフィス街の真っ只中にあるのです。
オーナー自らの目利きで世界中から厳選した食材だけを集めた
食のセレクトショップであり、
オイルや調味料、パスタ、スパイスなどが
おしゃれに飾られています。
本当に商品を売っているというより飾られているという印象です。
「食の販売」ではなく、お金を払う価値のある
「食のブランド」としての米国店のエッセンスが凝縮された
高級グルメストアなのだそうです。　
ターゲットは年収５０００万円クラスという話は
本当かもしれません。
実際、３万円もするバルサミコソースや数千円する
ジャムやパスタソースが並べられています。
３万円のバルサミコソースが陳列棚の最上段の手前に
置かれていたので、「ちょっと大き目の地震が来たら落ちそうね」
などと友人に庶民的な心配事を言いながらその場を後にしました。

高級食材売り場以外にも、スイーツや高級お惣菜コーナー、
エスプレッソバーがあり、飲食スペースも設けられています。
コーヒーや紅茶などのメニューは値段も
それほど高級でないので安心して楽しめます。　
ちなみにカフェ・ラテは５００円でした。
『こんなお洒落で高級な食材を買って料理するのは
どんな人なんだろう？ いや、きっと奥様はお料理しないで
専属の料理人が食材を準備して
料理してくれるような生活なんだろうなあ』等と
勝手に色々思いを馳せていると、なんとグラッときました！　
そうです地震が来たんです！！
私達はすぐさま３万円のバルサミコの棚に目をやりました。
バルサミコ以外にも瓶詰めの高級食材が沢山並んだ棚は
確かに少し揺らめいたのですが、どうやら無事でした。
それにしても自分の物でもない高級食材の安否が
思わず心配になってしまう小市民な自分に苦笑を覚えつつも、
私達以外にも確かに同じように安堵の表情を浮かべた人達が
何人もいたのを私は見逃しませんでした。　
軽い一体感を覚えてしまいました。
東京での震度は３ということで大きくはありませんでしたが、
今後震度５以上の地震があるたびに、
私は３万のバルサミコの安否が気になる事でしょう。
そういえば、高額な割れモノ（高級ワインとかバカラ製品とか
マイセン等の高級陶器類など）の地震対策は
どうなっているのでしょうか。　ちょっと気になります。