第116回
ブルガリでアップアップ

先日都内のあるホテルで開かれた
ＢＶＬＧＡＲＩの新作コレクション販売会に行ってまいりました。
それはＢＶＬＧＡＲＩのお得意様だけが招待される特別な場所。
そんな所にＢＶＬＧＡＲＩを一つも持っていない私が
友達にくっついて行って参りました。
お金持ちの顧客が沢山来るであろうと推測した私は
まず着ていくものに困ってしまいました。
どうしよう。。着ていくものがないっ！ということで
クローゼットの中を引っ掻き回して
なんとか身支度を整えて馳せ参じました。

一体どんなジュエリーに出会えるのか、
そしてまたどんな人達がお買い物をするのか興味深々です。
ホテルに着き、おしゃれにセットされた入り口を抜けながら
期待に胸を膨らませて会場内にはいると
そこは高級ジュエリーが煌く夢のような世界が！
そしてズラッと並ぶ美しい接客係のお姉さま達。
宝石を品定めするお客を品定めするかのような
接客係のお姉様達の視線を体中に痛いほど感じながら、
私は猫背にならないように
手足が一緒に出ないように注意しつつ、曖昧な微笑を浮かべて
なんとか無事最初のガラスケースまでたどり着く事ができました。
宝石の中でも目を引いたのが
カンヌ映画祭で二コールキッドマンが
実際に胸元を飾った新作の一点物のネックレス！
色とりどりの宝石と大粒のパールでデザインされたそれは
芸術の域に達していました。
さりげなくお値段を見てこれまたビックリ３０，０００，０００円
漢字で書くと三千万円です。
ふと見渡せば数百万〜数千万円の宝石が
販売用のガラスケースにお行儀良く並んでいました。
ゼロが沢山並ぶとつい指を折って数えてしまいます。
７５万円のエメラルドとダイヤの指輪を見つけた時、
思わず「あら、リーズナブルですわ！」と言ってしまった私。
すかさず担当の方が「それでは後ほどお試しになりますか？」
という感じの良い対応と共にトレーの上に商談候補商品として
乗せてくれました。

『ほ、欲しいっ！！　だけど高すぎるっ！買えないのっ！
どうやってそれを伝えたらいいの？！もう誰か買ってえ〜！！』
ともう内心はあっぷあっぷな状態です。
それでもなんとか姿勢を伸ばし微笑を浮かべながら
場内を一回りするうちにいつの間にかトレーの中には
指輪が４つと百何十万円もする高級腕時計が載っていました。
ここまで来ると感覚も程よく麻痺してきて
本当に自分が買うような気分になってきます。
場内の私以外のお客さんは明らかに
このようなお買い物に慣れているか、
このコレクションを楽しみにしていたかのような
お金持ちそうな人が沢山います。
着ている服やバッグもさりげなく高級品できめています。
同じくトレーの中を覗いてみれば、
素敵なジュエリーや時計がいくつも載っています。
それとも中には私と同じように曖昧な微笑で
心のドキドキをカバーしている人がいるのでしょうか。

さて、トレーにお気に入りの品々が集まったら
そのあとは奥に用意されたテーブルで
ゆっくりとトレーの中のジュエリーたちを
吟味する段階へと移ります。
先程からすでにどうやってこの状況を切り抜けたらいいのか
ドキドキしている私は背中に冷たい汗が流れるのを感じました。
ところが、実際にジュエリーや時計を身につけてみると、、
これが『物凄くいいっ！！』のです。
滑らかな付け心地は肌に心地よく、
個体で見るとちょっと派手なジュエリーや時計が
身につけると不思議と品良く収まり、
輝きは一層キラキラと増すのです。
しばし値段や自分の状況も忘れて
その美しさの虜になってしまいました。　
もうすっかり有頂天の私は
一瞬これを買ってしまおうかと思ったほどです。

ですが、やはり冷静になって何百万円もの支払いを考えて
勇気を出して断りました。
こういうものを無理して買うものではないと思ったからです。
心に余裕がないのに買ったらジュエリーをつけるたびに
お金のことを考えてストレスになりそうです。
断っても担当の方は本当に感じよく受けていただき、
「せっかくですからお気に召すものがあったら
どうぞおつけになってみてくださいね！」という
一言まで添えてくれてとてもいい気分になりました。　

私は絶対自分の力でこれを手に入れると決めました。
会場を後にする時にはもう何だか
やる気が俄然アップしていました。
そして意気揚々と手ぶらで出口へと向かいました。
これからはＢＶＬＧＡＲＩは私にとってやる気の源となって
くれることでしょう。