服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第2回
ジャン・コクトーとワイシャツ

ワイシャツの一種に「コクトー・スタイル」
というのがあるのをご存知ですか。
フランスの詩人にして作家であった
ジャン・コクトー(1889〜1963年)が好んだところから、
その名前があるのです。

コクトーは縞柄のワイシャツが好きだった。
ところがよく見ると、身頃部分のストライプと、
襟や袖口のストライプとが微妙に違う。
このわずかな違いがしゃれてるじゃないか、というわけです。
人呼んで「コクトー・スタイル」。

ジャン・コクトーは主にパリの「アルニス」という店で
ワイシャツを仕立てさせていた。
たしかに縞柄のワイシャツかお好みだったようです。
さて、しばらくしてからコクトー先生ふたたび店に来て言う。
「以前に作ってもらったシャツの襟と
 袖口がすり切れたから直しておくれ」
しかしそう言われてもそれと同じ縞柄のシャツ地は
もう残っていない。

ここがコクトーの立派なところで、
「いやなにも同じ縞柄でなくても、似よりの生地で換えてよ」
こうして同じストライプではあるけれど、
微妙に太さや間隔の異なったカラーやカフスのシャツが
誕生したわけです。

今でもクリーニング店やリペア専門店で、
ワイシャツの修理は比較的簡単にやってくれます。
ただ問題なのは身頃地と同じ生地があるかどうかということ。
でも、コクトーに見習うなら、
なにも同一のシャツである必要はないのです。
というよりも、似ているけれど少し違っているほうが、
かえってしゃれた感じになることもあるわけですから。

もっと積極的にストライプのシャツに、
白いカラーとカフスを付けたなら、
自分だけのクレリック・シャツとして
愉しむことができるでしょう。

とにかくいくら着古したシャツでも決して捨てないように。
また、着古しても捨てたくないようなシャツを
最初から選ぶことが大切なことです。


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