服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第16回
靴下を自分で洗うしゃれ男

靴下の洗い方について。
こんなふうに書きはじめると、
怒り出す人がいるかも知れません。まあまあ、お静かに。
たしかに洗濯機は便利ですが、
靴下にとって理想的とは言えないでしょう。

私ごとですが、旅先では
必ず自分で靴下と下着(ブリーフ)とを洗います。
夜、寝る前に風呂に入る。
この時、バスタブで身体といっしょに洗う。
乾きやすい所に干しておけば、
翌朝にはもう乾いています。
こうすればそれほど多くの靴下や下着を
持ち歩く必要はないのです。

手洗いの良い所は靴下を痛めないことです。
結局は長持ちする。それに毛玉にもなりにくく、
小さな繊維のカスが付くこともありません。
洗って乾けば、そのまま履いてまったく問題ないのです。
なにごとも習慣で、慣れてしまえば
ちっとも面倒ではありません。

自分で靴下を洗うことのもうひとつのメリットは、香り。
たとえば自分の好みの香料せっけんを使って洗う。
あるいは最後にゆすぐ時、香水を一滴だけたらしておく。
すると乾いた時、そこはかとなく
良い香りが漂うはずです。

さて、靴下は自分の手で洗う、と決めたとしましょう。
ここから新しい世界がはじまるのです。
我われは靴下といえば
たいていナイロン混紡がふつうだと思っています。
でも広い世の中には高級靴下も一部あるのです。
たとえばアンゴラやカシミヤやヴィキューナなどの。
これらはウールのなかでもとくに、
「獣毛」(じゅうもう)と呼ばれたりするのですが、
肌ざわりが素晴らしい。と同時に驚くほど暖かい。
ゆとりある大人の靴下としては最高でしょう。
ただしひとつだけ欠点をあげるなら、上品で繊細で、弱い。
丁寧に扱ってやる必要があります。

もちろん手洗いで、裏返しにし、陰干しにする。
そしてこれだけの愛情を注ぐにふさわしい
感触の良さを持っているのです。


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