服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第18回
たまにはネクタイを裏返してみよ

ネクタイの結び方には85通りがある。
という説があります。
しかしよほどの暇人でもない限り、
そのすべてを心得ておく必要もないでしょう。
それぞれの胸元で美しく結ばれてさえいれば良いのですから。

しかしここにひとつだけ”プラット”
という結び方があるのをご紹介しておきましょう。
もちろん毎朝の出勤にも可能な基本形のひとつです。

まず、ネクタイを裏返しにしてシャツの襟に通します。
ふつう右利きの人なら、左側に小剣、
右側に大剣がくるはずです。次に大剣と小剣を交差させる。
この時、大剣が小剣の下になるように重ねます。
たいていの場合、小剣の上に大剣を重ねることを考えれば、
逆になります。

両者を交差させたなら今度は大剣を引上げて、
交差した位置の上に通す。
完全に通し終えたなら、今度は大剣の端を
交差位置の前で一回転させて、小さな輪を作ります。
そしてこの輪の中に大剣を通します。
ちょうど我われが「セミ・ウィンザー・ノット」
と呼ばれる結び方に似ているかもしれません。

1989年にジェリー・プラットという人が考案したために、
その名前で呼ばれるとのことです。
ネクタイを裏返して、大剣を小剣の下に置くのが特徴でしょう。
そしてこれを応用すれば、いくつかの変り型も思いつくはずです。
この結び方の良い所は
比較的ゆったりとした大形の結び方になること。
一方あえて欠点をあげるなら、
ネクタイを解く時、大剣自体に結び目が残ることです。

ネクタイを上手に結ぶには、あまりきつく締めてはいけません。
よりソフトで、より立体的な結び目こそが
最上とされるのですから。
逆にいえば、ゆるやかに、ふわりと結んでも
なおゆるまないようなネクタイは極上品と言って良いでしょう。
結び目の下に小さな凹みをつけることを
”ディムプル”と言うのは、もうご存じのことですね。


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