服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第21回
絹ハンカチは美しい眼鏡拭き

上着の胸ポケットに何を入れるか入れないかは、
まったく本人の自由です。
少しおしゃれに関心ある人は
絹のハンカチーフを入れるかも知れません。
あるいは純粋なおしゃれ心から
高級万年筆を入れる人もあります。
さらには襟元から金鎖を垂らして懐中時計を入れる人もいます。

装飾用の、絹ハンカチのことを”ポケッチーフ”と言います。
場合によっては”ポケットチーフ”と呼ぶ人もいるようです。
アメリカでは”ポケット・スクエア”ということもあります。
もちろんただ「絹ハンカチ」でも
良いのではないでしょうか。

キザだ、と決めつける人もいるようですが、
私は大いに活用することにしています。
眼鏡のレンズを拭くのに便利なのです。
上着の胸ポケットから飾りハンカチを取出して、
それで眼鏡を拭く。
実はこれ、この上なく美しいポーズではないでしょうか。

おしゃれの本などを開くと、
絹ハンカチの飾り方が図解してあって、
その名称さえ紹介されています。
しかし、いちいちそれを参考にすることはありません。
「おや、知らない間に絹ハンカチが入っていた」
という無意識のあしらい方がいちばん美しいのですから。
さっき眼鏡を拭いた後、たまたま胸ポケットに入れておいたら、
少し上のほうがのぞいていたなあ、
なんて雰囲気はとてもおしゃれだし、自然だと思います。

しかしそれでも一応基本型を知っておきたい、
という声もあるでしょうから、ひとつだけ紹介します。
まずポケッチーフのほぼ中心点を
右手の二本で指つまみ、軽く下に振りおろす。
それを左手で撫でてやると、下に山型の飾りが生まれます。
そこで絹ハンカチをタテに二つ折りにする。
と、中央部の丸いふくらみと、四隅の突起とが、
波のような花のような飾りになってくれるでしょう。
むろんそのままの状態で胸ポケットに飾るのです。
もしこれが自然に見えたなら、おしゃれの達人です。


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