服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第29回
1本のネクタイからはじめましょう

よくネクタイの本数が話題になることがあります。
「オレはネクタイ300本持ってるぞ」といったふうに。
でも本数の多いこととセンスの良さとはまた別関係です。

たとえばたった1本のネクタイで
最高のおしゃれをすることだって可能なのです。
1年365日、必ず同じネクタイを締める。
この場合にはニット・タイ以外には考えられません。
黒無地の、シルクの、手編みのネクタイ。
むかし「007」でボンド(ショーン・コネリー配役)が
締めていたネクタイです。

トランプにジョーカーがあるように、
黒絹のニット・タイは組む相手を問いません。
ダーク・グレイの背広に結ぶこともできれば、
紺のブレザーにも合わせることができます。
時と場合によっては
ワイン・カラーのカーディガンにも向くでしょう。

ブラック・シルクのニット・タイはシワにならず永保ちし、
しかも流行に左右されることがありません。
けれどもなぜかニット・タイに愛情をそそぐ人が
少ないのは、残念なことです。
なにもニット・タイ1本だけ、と決めつけなくとも、
せめて1本くらいは用意しておこうではありませんか。

上等のニット・タイは美しい音楽を秘めています。
ニット・タイを掌の中に入れて、
強くもみながら耳に近づけて下さい。
衣擦れ(きぬづれ)に似た美しい音が聴こえてくるはずです。
これは編糸(あみいと)の密度が高いことの証明でもあり、
高級ニット・タイの見分け方でもあります。
ニット・タイについては少数精鋭、
質が良いものを数少なく持とうではありませんか。

もちろんニット・タイに愛情を感じたなら、
黒無地ばかりでなく、紺やグリーン、イエロー、ワイン、
ヴァイレット・・・7色ほど揃えたくなるかも知れません。

ネクタイは結び目のすぐ下に、
小さな凹みをつけて結ぶことになっています。
ニット、タイにも上手にセンター・ディンプルが
つけられるようになったなら、おしゃれも一人前。


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