服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第28回
留めるべきか外すべきか、それが問題だ

シングル前の上着には2つボタンと3つボタンがあります。
もちろん1つボタンということもあれば、
4つボタンという場合もあるでしょうが、
たいていは2個か3個が多い。
2個と3個、いったい何がどう違うのか。

背広の原型は軍服であったという説があり、
もともとは5つ、7つなどとボタン数が多かった。
そのボタン数が時代とともに省略されて、
ほぼ今のような形になったのです。
つまり2個のほうがより進歩的、
3個のほうがより古典的ということになります。
モダン好みは前者、クラシック好みは後者とも言えるでしょう。
ただし今現在は、クラシックな3つボタン型が
新鮮に見える傾向があります。

しかし前ボタンの数よりも実はもっと大切なことがあるのです。
それは、「ウエストライン意識」とでも言えば良いでしょうか。
上着なりスーツなりを着る時、常にウエストラインを意識する。
これは必ずしもウエストラインを
はっきりと絞っているのか否かに関係ありません。
<この上着のウエストラインはどこなのか>
と考えた上で、それに袖を通すことです。

第1ボタンあたり、あるいは第2ボタンあたりに
ウエストラインが暗示されていることがあります。
その見えない線が全体の中心になるような気持で着こなすのが、
理想なのです。
「ウエストライン意識」とはそういう意味なのです。

たとえばシングル3つボタンのスーツを着る時、
3つのボタンをすべて留めるのはどうでしょうか。
ウエストラインがどのあたりに置かれているか、
よく考えてみて下さい。
もしも中央のボタンあたりだとするなら、
必ず一番下のボタンは外しておいて下さい。
ウエストラインよりも下にあるボタンは
外しておくのが常識です。

それほどにボタン位置とウエストラインの関係は
とても密接なのです。
留めるべきか外すべきか、よく考えてみて下さいね。


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