服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第68回
雨にも強いローデン・コートの秘密

ローデン・コートを知っていますか。
ヨーロッパでは冬になると、
まるでユニフォームであるかのように見られます。
男はもちろんですが、
女性や少年少女が着ていることも珍らしくありません。
でも、日本ではほとんど見かけません。
なぜでしょうか。

ローデン・コートは美しいAライン型のコートで、
着丈も膝下までと長いものです。
肩幅は狭く、高く、
裾にかけてはゆったりとした拡りを持っています。
後には深く長い
インヴァーテッド・プリーツ(一種の箱ヒダ)が付き、
着脱式のフードも備えられます。

”ローデン” loden はもともと生地の名前で、
ローデン地で仕立てたコートという意味なのです。
そもそもはドイツの山岳地帯ではじまった丈夫なウール地で、
20世紀のはじめになってイギリスへ伝えられたものです。

最初は羊飼いをはじめとする、
戸外労働着のコートであったと考えられています。
ローデンという生地の特徴は防寒性に加えて
防水性を持っていることです。
多少の雨ならレインコート代りにもなってくれます。
これは高度に縮絨(しゅくじゅう)が
なされているからなのです。
縮絨とは一度織上げた生地をほとんど極限まで縮めること。
これによって織目が詰まり、
水が中に入ってはこないのです。

ローデン・グリーンという色は、
この生地に伝統的に使われる
ミックス調の深い緑色のことなのです。
ローデンがいかに古い歴史を持っているか、
このことからもお分りでしょう。

さて、日本でなぜローデン・コートを着る人が少ないのか。
丈が長く、厚手で、扱いにくいと思われるからでしょう。
でも、雨や雪に強いことを考えれば、
一度着てみても良いのではないでしょうか。
雨や雪で汚れたとしても、
自然乾燥後にブラシをかけると簡単にきれいになります。
海外旅行の際には探してみて下さい。
デパートや専門店にたいていありますし、
それほど高いものではありません。


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2002年11月30日(土)

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