服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第67回
ピー・コート、それともピー・ジャケット?

ピー・コートを着たことがありますか。
日本では必ず「ピー・コート」と言います。
でも外国では”ピー・ジャケット”で、
「ピー・コート」の言葉はまず使いません。
使用目的はあくまでもコートの種類なのですが、
例外なく”ピー・ジャケット”です。

”ピー・ジャケット” pea jacket の語源は
オランダ語の”ピージャッケル” pijjekker だろうと
考えられています。
この場合の”ピー”は、厚くて丈夫なコート用の生地です。
つまり本来は、戸外作業用の、
コート地で仕立てた防寒具であったのでしょう。
これは18世紀のことで、19世紀のはじめ英国に伝えられて
”ピー・ジャケット”となったのです。

ことに寒い甲板で見張りに立つ船員に重宝されたのです。
このために”パイロット・コート”の別名もありますが、
この場合には必ずコートとなります。
ピー・コートには実にさまざまな特徴がありますが、
そのひとつは右前にも左前にも
ボタンが留められるようになっていることです。
これは寒風とは逆の方向にボタンを留めて、
風が入らないようにするための工夫なのです。

大きな襟はそれを立てて
汽笛を聞きわけるためでもあったとのことですが、
今では防寒にも役立ってくれます。
また両胸のマフ・ポケットは海軍でも特別に許された、
手を温めるためのポケットであったのです。

こんなふうにはじめればキリがありませんが、
ピー・コートは少なくとも学生のユニフォームではありません。
しっかりと厚手の、本物のピー・コートは
むしろ大人のための軽快な防寒着だと思います。
同じくネイビー・ブルーのパンツを組合わせて、
まるでスーツのような着こなしも面白いでしょう。
この場合は厚手のタートルネック・スェーターなどを着て、
上着は省略する。
ブルー・ジーンズを合わせる方法もあります。
文字通り上着感覚で愉しめるコートなのです。


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2002年11月29日(金)

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