服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第80回
1つボタンの不思議

タキシードはなぜ1つボタンが基本であるのか、
知っていますか。
もちろん最近では2つボタン型もあれば、
3つボタン、4つボタンなども登場しています。
でもこれらはやはりファンシー・タキシードと
考えるべきでしょう。

しかし19世紀の中頃にタキシードの原型が生まれた時には
実は2つボタン型が主流だったのです。
が、この2つの前ボタンはまず留めることがなかった。
つまりボタンを外したまま着るのが正式だとされたのです。
なぜなら、燕尾服(イヴニング・コート)を
お手本としたからです。
燕尾服は前ボタンが2列に並んでいますが、
これは純然たる飾りで、絶対に留めることがありません。
これと同じように初期のタキシードも、
前ボタンが2つ付いているのにもかかわらず、
まず留めることがなかったのです。

留めることがないのなら1個で良いじゃないかと、
1つボタンが主流となるのは
1893年頃からのことだと考えられています。
そして20世紀以降は部屋着というよりも
略礼服とされるようになって、
この1つボタンを留めるようになったわけです。

ところでタキシードの前ボタンには
まず例外なく、ボタン穴がありません。
というよりもくるみボタンになっているために、
ボタン穴は見えない形式なのです。
これを“セルフ・カヴァード・ボタン”
(くるみボタン)と言います。
サテン地などの布地で表面を包んでいるために、
この名前があります。
これは言うまでもなく
「下着的」な要素を省こうとした結果なのです。

タキシードにはシングル前のみならず、
ダブル前があることもご存じでしょう。
2つボタン、4つボタン、6つボタンなどの種類があります。
でも、どちらがより正式かといえば当然、
シングル前のディナー・ジャケットなのです。
ダブル前もまた一種のファンシー・タキシードと
考えるべきでしょう。


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2002年12月12日(木)

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