服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第79回
さあ、タキシードで遊ぼう

ファンシー・タキシードという言葉を
聞いたことがありますか。
通常の、黒無地以外の、
さまざまな色柄をあしらったタキシードのことです。
たとえば色ではブルー、グレーをはじめ、
ワイン・カラーやイエローといった色調のものもあります。

一方、生地としてはウールに代えてシルク地を使ったり、
ヴェルヴェット(ビロード)やモアレ地(木目模様)、
あるいはあえてデニム地を使ったタキシードなどもあります。
あるいはタータン・チェックや
ペーズリー柄(勾玉模様)の
ディナー・ジャケットを見たこともおありでしょう。

これらは礼儀上の必要から着るフォーマル・ウェアではなく、
社交やパーティーを楽しむためのおしゃれ着と考えるべきです。
一例をあげるなら、豪華客船で世界一周といった場合には、
ほとんど毎夕、タキシードが求められるわけで、
時にはこのような趣向をこらした、
ファンシー・タキシードが活躍してくれるのです。

ファンシー・タキシードと割切るなら、
どんな色、どんな素材でも不可能ではありません。
ただし上着以外はあくまでも正装のルールを守ること。
つまり白のドレス・シャツ、黒のドレス・トラウザ―ス、
そしてエナメルのオペラ・パンプスといった具合にです。
蝶ネクタイやカマーバンドも
やはり黒無地を選ぶべきでしょう。

ところでタキシードによく使われる色に
“ミッドナイト・ブルー”があります。
実はこれはファンシー・タキシードとは
別のものなのです。

ミッドナイト・ブルーは本来、
夜間照明のもとで、黒に見える色のことを指します。
昔の染色法では黒が黒として見えない場合があり、
むしろ深い紺に染めたほうが
美しい黒に見えることからはじまったものなのです。
かのウインザー公が1920年代に着用したことから
流行したものだと言われています。


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2002年12月11日(水)

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