服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第117回
馬と柄とスポーツ・ジャケット

スモール・チェックのスポーツ・シャツを
着たことがありますか。
全体に小さな格子柄が配されているところから、
その名前があります。
あえて日本語に訳すなら
「小格子(こごうし)」ということでしょうか。

スモール・チェックのなかでも代表的な存在が
タッタ―ソール・チェックです。
たとえばオフ・ホワイトの地にイエローとブラウンの2色で、
交互に格子があしらわれた、二重格子柄のことです。
正しくは“タッターソールズ・チェック”
tattersall’s checkと呼ばれます。

タッターソールはもともとロンドンの馬市場のこと。
1766年にリチャード・タッターソール(1724〜1795年)が
創設したところから、その名前が生まれたものです。

R・タッターソールは名伯楽としたわれた人物で、
馬の目ききとして右に出る者がなかった。
馬を売買するとき、R・タッターソールが選んだものなら、
まず間違いないだろうと信頼されたほどです。
馬を売買するとき、たいていホース・ブランケットを掛けてやる。
そしてR・タッターソールの扱う馬の毛布は
小さな二重格子であった。

つまり現在のタッターソール・チェックは、
もともとホース・ブランケットの柄であったのです。
やがて19世紀になって
馬関係者のオット・ヴェストの柄となります。
その時代は、タッターソール柄のチョッキを着ている人物は、
たいてい馬の業者であろうと思われたわけです。
タッターソール・チェックが広く流行するのは
1890年頃からだと考えられています。

タッターソールがいかに伝統的な柄であるか、
お分り頂けるでしょう。
そしてまたツイードのカントリー・ジャケットに
組合わせるには最適の柄でもあるのです。
タッターソールに関しては、パターン・オン・パターン
(柄と柄の重なり)も問題とはなりません。
もっと自由に替上着に合わせて楽しみましょう。


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2003年1月18日(土)

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