服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第142回
フィッシャーマンズ・スェーターを着てみよう

フィッシャーマンズ・スェーターを着たことがありますか。
すべてのスェーターの源が
フィッシャーマンズ・スェーターにあることは、
すでにお話した通りです。
寒い海で働く漁師たちの労働着からはじまっています。

フィッシャーマンズ・スェーターは主として
オフ・ホワイトのものが多い。
これは昔から原毛を染色することなく編んだからなのです。
原毛は自然の油脂を含んでいて、
水を寄せつけなかったからです。
これを手で紡ぎ、手で編んだのです。

それは太い羊毛糸を密に編んだもので、
ほとんど風を通さない。
だから寒風にスェーター1枚でも寒くないのです。
太い編糸を“ロウ・ゲージ”、
細い編糸を“ファイン・ゲージ”と言います。
つまりむかしのスェーターはほとんど太い編糸が使われたのです。
と同時にしっかりと編み込んであり、
1枚のコートほどの重さがありました。
ごく単純に言って、
重いフィッシャーマンズ・スェーターほど温かいし、
また本格的であるということになるでしょう。

フィッシャーマンズ・スェーターは総称で、
具体的な例をひとつあげるなら、アラン・スェーター。
古い時代にはそれぞれの地方に
それぞれのフィッシャーマンズ・スェーターがありました。
が、今日に至るまで語りつがれて広く知られているのは、
もうアラン・スェーターだけになってしまいました。

アラン諸島で古くから伝統的に編まれるところから、
アラン・スェーターの名前があります。
アラン島Aranはアイルランド西部
ゴールウェイ沖に浮ぶ島々です。
と同時に現在のフィッシャーマンズ・スェーター発祥の地も
この辺りだろうと考えられています。
もともとはタートルネック(ポロネックとも)の
スタイルであったようです。

スェーターの着こなしにもっとも大切なことは
愛情を持って袖を通すこと。
その愛情はやなりそのスェーターを
理解することからはじまります。


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2003年2月12日(水)

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