服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第148回
力強い男の、力強いスェーター

旅先で寒い思いをした経験がありますか。
私はあります。
むかし、イタリアの田舎町を旅した時のこと。
6月のことで旅衣裳はすべて夏物。
ところが異常気象と言うべきか、寒い寒い。
小雨が降りはじめたりすると、
半袖シャツでは歯の根が合わない。
服を調達しようにも、洋服店なんか見当らないのです。
そこでどうしたと思いますか。

私はとある銃砲店を見つけたのです。
田舎ということは野山が多いということで、
野山が多いということはたくさんの鳥獣がいるということで、
つまり狩猟に適した土地なのです。
銃砲店、つまり狩猟用品を扱っていて、
季節に関係なくハンティング・ウェアを置いてあります。

結論を急ぎます。
私はここで一枚のクルーネック・スェーターを買ったのです。
たしか日本円で5000円位だったと思います。
それは紺色のシェットランド・ウールを使ったもので、
両肩と両肘に補強のための当て布をあしらっていました。
おかげで風邪をひくこともなく、
今も旅の思い出とともにタンスの中に仕舞ってあります。

今にしてみれば俗に
「NATOのスェーター」と呼ばれている一枚だったのです。
NATO軍の兵士たちが
最初に着はじめたものだと言われています。
それはともかくもともと軍用スェーターであったことは
間違いないでしょう。
たしかにスェーターの肘は弱いもので、
ここを補強するのは理に叶っているでしょう。
また男らしさを強調してくれるスェーターでもあります。

日本でも似たようなスェーターを買うことはできます。
中田商店」では一枚5800円位で、入手できるはずです。

もっともシェットランド・ウールの、
クルーネック・スェーターを持っているのなら、
上着に付けるスエード製のエルボーパッチを
自分で縫いつけるのも面白いでしょう。


←前回記事へ

2003年2月18日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ