服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第156回
スーツは着るパスポートなのです

ベイシック・スーツという言葉を聞いたことがありますか。
基本的なスーツだから、ベイシック・スーツ。

フレッシュマンのための
最初のビジネス・スーツはベイシックであるべし、
というのが私の考えです。
ではベイシック・スーツとは何でしょう。

まずダーク・トーンの無地、
それもウーステッド地ということになります。
ウーステッドとはウーレン(紡毛地)に対する
「梳毛地(そもうじ)」のことです。
これはより細く長い羊毛糸で織った生地の総称。
要するに、フラットで滑らかな表面感のウール地が
望ましいということになります。

デザインやシルエットについても
基本的であればあるほどよろしい。
シングル前の3つボタン型、
それ以外に考えられません。
またそのボタン位置やポケットの形なども、
基本に徹する。

―ではベイシック・スーツとはまるで制服ではないか、
と異をとなえる人もいるでしょう。
あまりにもフレッシュマンが可愛そうではないか、
と考える人がいるかも知れません。

でも私は、フレッシュマンにとってのビジネス・スーツは、
着るパスポートだと思います。
パスポートに個性が必要ないのと同様、
定型であるからこそパスポートとして役立つのです。
「私はベイシック・スーツをちゃんと選び、
きちんと着こなすことができますよ」
と言葉なしに宣言することが目的なのです。
だからこそ社会に新人として
歓迎されるのではないでしょうか。

もし2着のスーツを前に迷ったなら、
必ずよりベーシックであるほうを選びましょう。
では、いったい個性は、人間性はどうなるのか。
どうか安心して下さい。
スーツ自体はあくまでもパスポートであり、
そこに自分の写真を貼り、署名があるように、
ワイシャツがあり、ネクタイがあるのです。
つまりシャツとタイがいかに大切であるかお分りでしょう。


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2003年2月26日(水)

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