服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第158回
まずダーク・スーツを選んでみよう

ダーク・スーツは具体的にはいったいどんな色だろうかと、
考えてみたことがありますか。

ダーク・スーツ、ダーク・トーン、
ごくふつうに使う言葉ですよね。
ビジネス・スーツにおけるダーク・トーンとは、
ダーク・グレーとダーク・ブルーのことなのです。
それ以外はけっしてダーク・スーツではありません。
「そんなバカな」、「リクツに合ってないよ」
とおっしゃる方がいるかも知れません。
でも、これは本当のことなのです。

色彩全体における「ダーク・トーン」の意味はたいへん広い。
けれどもビジネス・スーツに限っては、
ダーク・グレイとダーク・ブルーだけがダーク・トーンなのです。

なぜか。これはひとつには19世紀のイギリスにおいて、
黒、もしくは黒に近い色こそが紳士にふさわしいと
考えられたことと関係があります。
誰が勝手にそんなことを決めたのか。
ボオ・ブランメル(1778〜1840年)です。
時の英国皇太子にさえ信頼された社交界のリーダーでありました。
ボオ・ブランメルの没後、一時的に明るい色が流行ったほどです。

それともうひとつ。
英国人はむかしからブラウンやグリーンを
カントリーで着る色だと考えていたからです。
それで今でもいかにダーク・ブラウンや
ダーク・グリーンであっても
ビジネス・スーツには不向きだと考えられるわけです。

ダーク・ブルーとダーク・グレーを着るべし。
これはフレッシュマンが
ビジネス・スーツを選ぶ上での約束事なのです。
「いや私としてはダーク・グリーンが着たい」
などとは言わないで下さい。
そもそもビジネス・スーツとは黒板のように
絶対に目立たないことが大きな役割なのですから。
この着る黒板の上にどんな絵を描くか、
文字を書くかが、着こなしのはじまりなのです。

もちろんシャツやネクタイや、
さまざまなアクセサリーを使ってですが。


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2003年2月28日(金)

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